「志」を求める若者たち【特別編】 若者の情熱が世界を変える――ブラストビート創業者・スティーブンソン氏

国内外の社会起業家が事業プレゼンするイベント「社会起業支援サミット2010」(10月3日大隈講堂)に、世界的な社会起業家ロバート・スティーブンソン氏がアイルランドから来日。社会起業を志す若者へ贈る提言とは。(聞き手 今一生)­=文中敬称略

ロバート・スティーブンソン プロデューサーとしてU2をデビューさせるなど音楽業界で25年のキャリアを持つ。2003年、「ブラストビート」創業。2006年、アイルランド社会起業家賞を受賞

村上雅彦 2004年からNEC総務部CSR推進室が本務となり、2006年より総務部法務・CSR推進室専任で社会貢献および環境保護を担当。社会貢献室マネージャー。

(本誌からの続き)

――ロバートさんの話を聞いて、企業CSRの最前線で仕事をされている村上さんはどうお感じになりましたか。

NEC CSR推進部 社会貢献室の村上雅彦氏

村上 日本企業のもっている悩みと、世界のNPO社会起業のニーズが一致することに、ロバート・スティーブンソンさんと話して気づき、感動しました。

日本企業の社会貢献も変わってきています。以前のような窓際族の部署ではなく、起業戦略に非常に近い部分にあります。キーワードは「企業市民」。社会のためになるという意識が必要ということに企業経営者が気づいてきた。企業に入って社会貢献することが、これから楽しくなってきます。

経団連の手引きの企業行動憲章があります。これはよき企業市民として社会的責任を果たすもので、15年前から明記していたけど、やっていなかったんですね。最近やっとこれに追い付いてきたところです。

CSRはテーマ設定が重要。NECでは、ステークホルダーからの意見、SRIの指摘を参考にして7つのテーマを設定しています。気候変動、通信インフラのセキュリティ、お客さんとのコミュニケーション、社内環境(社員もステークホルダー)、コンプライアンス。特に注力するのはこの5つで、関係する事業を受け入れます。

『社会起業支援サミット2010 in TOKYO』の午前中に行われた対談「ソーシャル・イノベーションとCSR」の様子

NPOやNGOとwin-winの関係を作ったり、社会起業家を育成したりすることなどが基本方針にありますが、具体的な成果を達成するNPOと組みます。NECのNPOパートナーを選定する基準は、NPO認定であること、お互いの尊重、目標と成果の確認、社員参加が可能かどうか、などです。

NPOに対しては、事業活動のパートナーになれるか、その事業が社員の能力開発の機会になるかを考えますね。事業継続の安定性が重要で、NPOも「支援をうける立場」だけではいけない、win-winが大事。

また、情報公開も必要です。NPOの評価に対する情報不足が今、課題になっているんです。そのためにも中間支援組織の育成が必要です。

CSR活動全体の課題としては、企業担当者による温度差があります。経団連などが音頭をとって、意識を教育していかなくてはならない。これは今の課題ですが、ちょうどいま社会起業意識が激変しているところなので、一年後にはこんな心配いらないかもしれません。

司会を務めるフリーライターの今一生氏

NECでは9年間、NPO法人ETIC.と協働し、若手の起業支援をしています。ETIC.が教材を提供、NECが7ヶ月間の研修費を負担し、若い学生が参加します。NECのメリット、社員の意識向上、イノベーション創出の場(新しいビジネスパートナー)、優秀な人材の確保などを考えながら進めていますが、NEC社会起業塾では毎年3-5団体の社会起業家が生まれ、現在までに34団体が卒業しています。

同様の試みは、花王や横浜市も進めていますね。企業もNPOも意識が急速に変わり始めています。それはもう、鳥肌が立つほどに。こういう意識を持っている社員がないと、企業も生きていけない。そんな時代です。

――ブラストビートの卒業者が世界中に増えると、その情報を真っ先につかむことでNECにも良いことがあるのでは。

村上 これは個人的な意見で、会社の方針ではないですが、さきほどロバートさんといろんな話をしました。寄付金とかよりも、ヒューマン・リレーションシップを持ちたい。そのほうが刺激を得る教育になります。そうしたことをふまえ、社内に社会起業をするような人がほしいと思います。

大企業に入って、社会的な活動領域において大企業を変えたいって思っている人もいると思うんです。社員の社会参加は、前から言っているんですが、なかなか進まない。

ロバート・スティーブンソン氏

ロバートさんのいう楽しさ、小さな成功体験の提供を人材教育でしていかないと浸透しないだろうと思っています。NECの14万の社員一人一人の意識的なものは課題で、地理的な枠を超えた世界観が必要です。ブラストビートには、まさに世界を作っていくという意識がありますね。社会に貢献していくという意識がこれからの企業にも必要です。

スティーブンソン 今みなさんは、これから始まるNECとブラストビートのリレーション構築の現場を目撃しています。みなさんは、これからプログラムが始動するのを知るわけです。私はとてもうれしいです。

村上 ただ、企業のいやらしいところですが、こうしたCSR活動を広報し、目立つ必要もあります。ワン・オブ・ゼムに埋もれると困ってしまう。

ここではブラストビートさんとの今後の協働について詳しくは言えませんが、こうやって今だけでもビジネスのアイデアが次々とわいてきます。このようにNPOと企業が組んでいける場所が必要なんです。

情熱で人を巻き込めば、さまざまなリソースを得ていくことはできます。人を巻き込めば、お金は後からついてくる。思想論だけでなく、自分の経験からも言えます。でも、情熱だけでつぶれて行く人も社会起業塾で見てきました。原因は自分で自分の問題意識や社会的課題をきちんと説明できないこと、図式を描けないことにありました。

――だからこそ、ソーシャルマインドが大事になってくるんですよね。

村上 ソーシャルマインドとは、どんな人がどんな苦しみを抱え、どんな解決のありようを切実に求めているのかに関心をもつことから始まります。そこには具体的な数値目標としてのコストと〆切が設定可能なはずで、その2つだけでも明確に自覚していれば、目標達成の目印になり、事業の成果が自分を励ますことにもなるので、持続可能なビジネスモデルへ洗練させていくことにも貪欲になれると思うのです。

村上雅彦氏について(※dffによるインタビュー)

ロバート・スティーブソン氏について(※NPO法人ブラストビートの公式サイトから)

社会起業支援サミット2010 in TOKYO

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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