村⽥浩⼀・⽇本⼤学⽣物資源学部特任教授は12月17日、WWF主催オンライン講演で、「新興感染症は土地利用の変化が最大原因」「(健康の相互関係である)One Health が実現されなければ、私たち⼈類の⽣存⾃体が危ない」と警告した。(オルタナ総研コンサルタント=室井孝之)

村田教授はOIE(世界獣疫事務局)、WGW(野⽣動物ワーキンググループ)委員、よこはま動物園ズーラシア園長を務める野生動物医学の専門家だ。講演「動物由来感染症とワンヘルスを巡る世界と日本の動向」の主旨は次の通りである。
野生動物の生息地の開発が感染症を拡大
新興感染症(EID)の原因には社会経済的な歪みが関わっており、⼟地利⽤の変化が最大の原因だ。野⽣動物本来の⽣息地を開発することがヒトと野⽣動物の接触機会(インターフェイス)を増し、感染症が伝播する機会を多くしている。
EIDの原因となる野⽣動物の⽣息環境破壊は、人の⽣活や経済に深く関わっている。家庭⽤品や⾷品に使われているパーム油は、東南アジアの熱帯⾬林を開発した⼤規模農場で得られる。スマホやノートパソコンの電池に使われているレアメタルは、アフリカのジャングルを開発した奥地から採掘される。
「One Health」とは、ヒトを含む⽣物と環境によって構成される⽣態系(Ecosystem)が健全でなければ、すべての⽣物が⽣存できないことを表す。One Healthで重要な点は、単にヒトや家畜の健康を守るためだけの概念ではなく、環境や社会や経済や政治など多様な分野と関わっていることだ。