日本の消費がなぜアフリカゾウに影響を与えるのか

密猟は野生動物の生態系やサバンナ全体の植生を壊す一因となっているが、日本に住む私たちにとって南アフリカの問題を「自分ごと」として考えにくい。そこで、日本人唯一のサファリガイドとして南アフリカで活動する太田ゆかさんに、アフリカゾウをとりまく変化について現地ガイドの視点で語ってもらった。

日本人サファリガイド 太田ゆか

南アフリカ在住日本人サファリガイド。初アフリカは2014年に訪れたボツワナ。これをきっかけに幼い頃からの夢である野生動物保護を実現するために、アフリカへの移住を決意。日本の大学を休学し、サファリガイドになるために南アフリカで訓練学校に入学。現在はクルーガー国立公園エリアで環境保全プロジェクトの専属サファリガイドとして活動。サバンナの魅力と現状を日本に広めるべく、様々な情報・写真をインスタグラムなどSNSから発信中。
太田さんの取り組みについてはこちら

かつては約1000万頭いたアフリカゾウですが、現在その数は約40万頭に減少しました。過去100年間にここまで激減した主な理由は「生息地の減少」と「密猟」です。

人口の増加に伴い野生動物の生息域は狭くなり、農民とアフリカゾウとの衝突も深刻な問題となっています。アフリカゾウがエサを求めて村の畑に入ってきてしまうため、畑の作物が被害に合うだけでなく、人身被害にも及ぶ事例も出ています。

牙のないゾウが増加も

野生動物の生息域が狭まる影響を被るのは、アフリカゾウも同じです。象牙をターゲットに密猟が横行し、年間3万頭ものアフリカゾウがその牙のために殺されています。日本も象牙消費国として1970年代以降、26万頭分もの象牙を消費してきました。

こうした長期的な密猟は、アフリカゾウの体にも影響を与えています。牙の立派なゾウは密猟の犠牲になりやすく、牙がない、または牙の小さな個体のほうが生き残りやすくなります。牙の小さなゾウが子孫を残していくので、遺伝的に牙の小さなゾウや牙の生えてこないアフリカゾウが増加しているのです。

牙がない母親のアフリカゾウとその子ども
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..