「森に働く馬の姿を」、C.W.ニコル氏が託した思い

2日間の視察体験を終え、森と人の関係について改めて考えさせられた。林業の世界では、森は木材を産出するためのもので、材積(木材の体積)で金額に換算され評価される。材の価格が低迷している今では、100年近く林家が代々手塩にかけて育ててきた森もたいした価値をもたなくなっている。

しかし、森と人の関係は、お金だけで量れるものではない。カード会社の宣伝文句のようで嫌なのだが、森にはお金に換算できない(プライスレスな)大きな価値がある。私たちは、そのことを頭の中で理解しているようで、実感として認識できていないのではないか。経済性という観点ではなく、自然環境や文化、私たちの健康という観点から森を理解しなければいけない。

林材ジャーナリストの赤堀楠雄さんが、「いい森とはどんな森?」との問いに対する回答の一つに「気持ちがいい森」とおっしゃっていた。アファンの森は、とても気持ちがよかった。日本の自然や文化を愛してくれたニコル氏は、「アファンの森」という遺言状を我々に残してくれた。彼の遺言をどう受け止め、どう行動するかが我々に問われている気がしてならない。

故C.W.ニコル氏(写真提供:C.W.ニコル・アファンの森財団)

フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

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