私は、この環境基本法の伏線として、その制定に先立つことさらに17年前、今からでは45年前になる1976年に行われた、OECDによる加盟国の環境政策のレビューの初回となった日本を対象とした審査を思い出す。
ここでは、日本は、公害をなくす戦闘には勝利を収めつつあるが、環境の質を高める、という大きな戦いにはまだ勝利をおさめていない、旨の指摘がなされた。そして、OECDは、「アメニティ」という言葉を示した。四囲の環境のもたらす居心地のよさ、である。
ところで、アメニティを当時から都市環境行政の目標に据えていたイギリスにあっても、アメニティについて明確な定義があったわけでなく、「あるべきものがあるべき場所にあること」といった意味である旨の解説がなされていた程度だと記憶している。
けれども、このあるべきものがあるべき場所にある、という感覚、言い換えれば、我々を取り巻くよき秩序を実感することが、私は、エコロジーの肉感的な現れだと、その後、歳を重ねるにつれ思いを深くしている。