入口から一歩進むと車いすユーザーが多数派という世界。そんな空間をロールプレイングで演出しているのが、車いすユーチューバーとして知られる寺田ユースケさんだ。寺田さんが招き入れた空間は、天井の高さも車いすに合わせて作られているために低め。参加者は入るとヘルメット着用を義務付けられる。

「このヘルメット、ガチで必要なんですよ」。そう話す寺田さんに導かれて入った「レストラン」は、テーブルもいすもない広い空間だった。店内を見回すと、壁にはパラリンピック選手のワンシーンを切り取った広告が並ぶが、その広告は身長160cm未満の筆者から見ても、低い位置に貼り付けられている。トイレのサインは車いすユーザーのマークが付けられ、流れるテレビからは障がいのない人を「二足歩行者」と呼び、まるでなにか問題があるかのようにニュースが報道される。

昨年、東京大学で初めて開催されたこの車いすユーザーが多数派の世界を体験するイベント「バリアフルレストラン」は話題を呼び、当初の予定では秋ごろには一般公開予定だったいう。しかし新型コロナの影響を受け、今回のイベント開催までずれ込んだ。

運営団体の公益財代法人日本ケアフィット共育機構は、「誰もが誰かのために共に生きる委員会(略称:チーム誰とも)」を活動組織として持ち、現在の健常者主導の目線で考えた「普通とそうでない人」を切り分けた考えに基づく社会の仕組み作りではなく、共生するための考え方を多くの人と共有すべく活動を進めている。

壁にはパラリンピック選手の格好いい広告写真が並ぶ
コミュニティに描かれる「ピクトグラム」こそ、その社会の多様性を示すぴったりの表現かもしれない

サイボーグパパ・寺田ユースケさん

今回のバリアフルレストランの店長を務めた寺田ユースケさんは、脳性麻痺の影響で20歳から車いすユーザーだ。新宿のホスト、お笑い芸人などを経て、現在はユーチューブチャンネル「寺田家TV」を運営するユーチューバーとして活躍する一方で、こうした障がい者との共生社会を推進する活動に参加している。さらに昨年、子どもが生まれたことをきっかけに、自立支援用ロボットスーツの「Hal(ハル)」を装着し、1年かけて歩行ができるように訓練中だという。

障がいがある人に限らず、日本が迎える超高齢化社会においても、車いすのユーザー数は増えるに違いない。「誰もが安心して暮らせる共生社会」を考え、そこへシフトしていくには、このようなイベントを通じた出会いが重要になるかもしれない。

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