具体的に見てみよう。2020年版(データ=2019年)のHDIランキング=図参照=は、①ノルウェー②アイルランド②スイス④香港④アイスランドの順番で日本は19位となっている。しかし、地球への悪影響を加味したPHDIで見ると順位が大幅に変化する。
ランキング1位のノルウェーは温暖化対策に熱心で二酸化炭素排出量(一人当たり、以下同じ)はOECD平均を下回っているものの、北海油田の最大の採掘、輸出国のひとつで、マテリアル・フットプリント(一人当たり、以下同じ)は世界のワースト6位だ。このためPHDIは15位下落する。アイスランドも二酸化炭素、マテリアル・フットプリントともにOECD平均を上回っており、順位を26下げる。
92という最大のランク下落をしてしまうシンガポールはどうだろうか。この国は二酸化炭素の排出量も多いが、マテリアル・フットプリントの方が世界でワースト2位だ。石油の貿易、精製の拠点になっており、エネルギー産業へのファイナンスも多い。こうした構造的な石油の輸入依存構造が影響したものとみられる。その他、順位を下げるのは、オーストラリア、カナダ、そして温暖化ガスの総排出量が多い米国である。
日本は2ランク上がる。順位を上げているのは、デンマーク、英国、ニュージーランド、イスラエルといった国々だ。二酸化炭素排出量、マテリアル・フットプリントとも世界平均を超えているものの、OECDの平均以下となっており、地球への圧力、負荷が比較的少ないと評価された結果である。
ちなみに二酸化炭素の総排出量の多い85位の中国は16ランクを落とすが、131位のインドは8つ順位がアップしている。
ランキングが低位や中位の国は地球へ負荷をあまりかけずに社会・経済的状況を改善しているが、高位、最高位の国ほど繁栄の見返りに地球へ何倍もの圧力をかけている傾向がある。従って、PHDIでは、地球に負荷をかけている国ほど、HDIのランキングから順位を落とすことになる。