意外!「東京産食材」の底力

【写真1】料理コンクールプロの部、審査員と入賞者

東京都は12月4日、「都内農林水産物を使用した料理コンクール」の最終審査を都内・秋葉原で行った。レシピテーマは「地産地消のおもてなし」。料理界や家庭の関心を呼び起こし、都産食材の販売をうながそうとする試みだ。プロ、一般の2つの計93件の応募作品の中から優秀賞に選ばれた8人が料理作りを実演した(写真1)。

最優秀賞はプロの部で東京都練馬区の相田米店の「野菜が驚くほど食べられる『YA!サイコロステーキ!?』」、一般の部では東京都小平市の小野久枝さんの「小平の恵みたっぷり煮だんご」が選ばれた。

審査委員長の料理研究家である服部幸應・服部学園理事長は、「レベルの高い作品が集まりの東京産食材の秘められた底力、可能性が改めて分かった」と、期待を述べた。

【写真2】最優秀賞の「野菜が驚くほど食べられる『YA!サイコロステーキ!?』」

「野菜が驚くほど食べられる『YA!サイコロステーキ!?』」(写真2)は東京都練馬区で、家業の「相田米店」を手伝いながら、そこで惣菜を作り販売している相田幸子さんの作品。ダイコン、キャベツなどは近くの農家から仕入れ、肉は東京都畜産試験場が品種改良した豚「東京X」を使った。「家の周りにはまだ農家がたくさんあり、子供のころから地元の野菜を食べて育った」と、日常生活から思いついたレシピだったという。

【写真3】煮だんご

「煮だんご」(写真3)は小平市の農家の主婦、小野久枝さんの作品。自宅で採れたウド、サトイモ、ダイコンなどを食材に使い、その新鮮さが審査員をうならせた。小野さんは同市で農産物の直売所を運営したり、「にごりや」というブランドで地元の食材を使ったケーキやジャムを作る。このレシピは「家でいつも作っているものをアレンジした。農家の嫁になって25年ですが、こんなうれしいことがあるとは思わなかった」という。

「地産地消」が日本でブームだ。移動にかかるエネルギーが少ないことに加えて、食材の野菜の鮮度が保たれ、地域にお金が回るなど多くのメリットが注目されている。そうした中で、東京産の農産物にも関心が出始めた。

しかし東京の農業には課題も多い。農作物価格の低迷、後継者不足などで農家の数が減っている現状がある。東京の食料自給率はカロリーベースで1%、生産額で5%にすぎない。

都が期待するのは、このブームを契機に東京の農業の価値を都民に再認識してもらうことだ。「東京の農業が食を通じて都民の皆さんにより身近になり、農家の方に利益ももたらされれば都市農業が支えられる」。コンテストを企画した東京都農林水産部の平野直彦食料安全課長はブームの広がりに希望を抱いている。(オルタナ編集部=石井孝明)2010年12月6日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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