世界でも問題になっている「生理の貧困」。生活必需品である生理用品が満足に購入できない状況にある女性達の隠れた貧困が、コロナ禍において日本でも顕在化。メディアなどでも取り上げられ、社会問題として注目されるようになった。背景にはコロナ禍でさらに広がった経済格差とともに、生理に対する意識の変化がある。いままで語ることがタブー視されてきた生理が、日本においてもようやくオープンに語られはじめるようになり、生理をめぐる様々な問題が可視化されるようになってきたのだ。本稿では国内の生理に関する企業活動やメディアの事例を分析し、「生理の貧困」および生理にまつわる女性の諸問題の今後を考察していく。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

■活発になるメディアや企業からの発信

2020年8月、テレビ東京で生理をテーマにした番組「生理キャンプ」が放送。女性タレントが生理にまつわる体験談を語り、最新の生理用品について男性タレントも一緒に学んでいく。

30分の特別番組だったが、生理を正面から取り扱う番組は地上波では画期的だった。このように近年、日本でも生理にまつわるコミュニケーションがよりオープンに活発になってきている。例えば生理用品ブランド・ソフィが手掛ける「#NoBagForMe」プロジェクト。

多様化する生理ケアの啓蒙や生理に関する発信を通して、女性が自分自身のカラダについて気がねなく話せる社会の実現を目指している。「No Bag」つまり生理用品を買う時にわざわざ紙袋に入れて隠さなくてもいい世の中へ。インフルエンサーや産婦人科医などのプロジェクトメンバーとともに活動を続けている。

プロダクトでは無印良品で発売された生理用品のパッケージがSNSを中心に大きな話題になった。注目を集めた理由は、シンプルなデザイン。従来のパステルカラーやピンクを基調としたデザインではなく、無地でハードタイプのボックスに入っている。

男性も抵抗なく買えるようなデザインで、実際店舗で購入する際も紙袋に入れられることはない。もちろん従来の華やかなパッケージを支持する人もおり、好みはそれぞれだ。しかし無印良品のシンプルなパッケージは従来の「キラキラした」生理の世界観に一石を投じ、選択肢が広がったことは大いに歓迎された。

炎上してしまう事例も発生

2020年7月に生理用品ブランド・ロリエが打ち出した新プロジェクト“kosei-ful”。個人差のある生理の症状を「個性」と捉え、もっとオープンに話し合えるようになれば、お互いに支えあえるようになるという考えのもとスタートしたが、プロジェクト開始からSNS上で批判が集まり炎上。約3週間でプロジェクトは打ち切りとなった。

女性がより生きやすくなることを目指してはじまったはずが、なぜ炎上してしまったのか。理由は大きく2つある。一つ目は生理の症状の違いを「個性」という言葉で表現してしまったこと。特に重い症状で悩んでいる人から、個性=個人的な問題として括るべきではないという批判をよんだ。

二つ目にまずは女性同士でわかりあおうという呼びかけが、生理についての問題は女性達で解決せよというメッセージに捉えられてしまったことだ。「生理の貧困」や生理による体調の変化、それにより女性の社会活動が制限されるという問題は、女性が個人で抱えるものではなく、社会全体で解決していく課題であるべきという声を改めて顕在化させた事例だ。

いま日本において生理に対する意識の変化は過渡期にあるといえる。メディアからの発信や企業コミュニケーション、フェムテックの進歩などにより、オープンな事柄になりはじめ、女性達の選択肢も増えてきた。

女性達のより自由な社会活動を実現できる世の中になるためには、今回紹介したようなメディアや企業活動のみならず、行政が担うべき部分も大いにあると思われる。世界各国で実現されはじめている生理用品の無償配布や軽減税率の導入など、政治主導で起こせる社会的変化の余地もまだ十分に残されているのではないだろうか。