花王は5月19日、新たな脱炭素目標として、2050年に「カーボンネガティブ」を目指すと発表した。昨年10月に菅首相が2050年に二酸化炭素の排出量を吸収量で相殺するカーボンニュートラルを政策目標に掲げたが、カーボンネガティブとはどう違うのか。(オルタナS編集長=池田 真隆)

花王が発表した新たな脱炭素目標では、2040年にカーボンニュートラル、2050年にカーボンネガティブを目指すとしている。同社では2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を策定した。この戦略では、「脱炭素」など19の重点取り組みを定めていた。
昨今、「気候変動」から「気候危機」といわれるようになるほど、地球温暖化対策は喫緊の国際課題になっている。世界経済フォーラムは毎年、企業にとってのグローバルリスクを発表しているが、「気候変動」にまつわる課題がここ数年は上位を占める。
機関投資家からの関心も高まっている。世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは毎年、投資先のCEOに年次書簡を送っているが、今年も企業の情報開示に気候変動への取り組みを強化することを求めた。
■2度ではなく「1.5度目標」が世界の潮流
こうしたことを背景に、脱炭素の取り組みは活発化している。国連で採択されたパリ協定では、今世紀後半までに世界の気温上昇を産業革命前と比べて「2度」未満に抑えることを目標としているが、それでは「不十分」という潮流が起きている。
その潮流の一つが、国際イニシアチブの「ビジネスアンビション(Business Ambition for 1.5℃)」だ。これには、気温上昇を「1.5℃」に抑えるために寄与することを宣言した企業が加盟している。
国連事務総長を務めた故コフィ―・アナンが立ち上げた「国連グローバル・コンパクト」や、国際的な企業/NGOのアライアンス「We Mean Business」、科学的根拠で温室効果ガス削減を目指すSBTi(サイエンス・ベースト・ターゲット・イニシアティブ)などの共催で2019年6月に始まった。現在、545社が加盟しており、そのうち日本企業は21社。花王も加盟している。
さらに、花王では事業運営に使う電力を100%再生可能エネルギーにすることを宣言した企業が加盟する「RE100」にも申請中だ。
脱炭素を推進する同社だが、2050年に「カーボンネガティブ」を掲げた。カーボンネガティブとは、カーボンニュートラルよりさらに強化した取り組みだ。排出量を吸収量で相殺するのではなく、排出量より吸収量を多くすることを指す。
カーボンネガティブで有名なのは、米マイクロソフトだ。再生可能エネルギーへの切り替えや気候変動対策への技術投資を通して、2030年までにカーボンネガティブを目指している。さらに、2050年までに、創業年の1975年以降に出したCO2と同量分を削減することも計画している。