がん当事者が「箸」開発、「食べる喜び」取り戻す

猫舌堂ではだれにとっても使いやすいカトラリーの開発を進める

カトラリーを作るにあたって、当事者としてのこだわりが多くあった。

まずは機能的な面として、「太すぎず、カーブも深すぎないもの。カトラリーが重いと、食欲が無い時には、口に運ぶのにも一苦労になってしまう」。

さらに「見た目が普通で、社会に溶け込めるデザインであること。障がいがある人用の食器となると、それだけで疎外されてしまう。社会とつながれること、それが一番本質的な悩み」と、一般的なカトラリーと並べても違和感が無いものを目指したいとした。

「質の良いものが作りたい。安くて質の悪いものを使っていると、食事をする時にテンションが上がらない。きちんとした所で、ちゃんとした職人さんに作ってほしい」。そんな思いで日本のステンレス加工の95%以上のシェアを持つと言われる、新潟県燕市の業者を探し依頼した。

試行錯誤の結果、口に入れやすい幅と薄さを持ち、とりこぼさない絶妙なカーブを持ちながらも、安っぽくならない重さを持ち、高級感のある素材・デザインのカトラリー「iisazy spoon」「iisazy fork」ができ上がった。現在までに合計7000個以上を売り上げている。

今回新発売した「iisazyお箸」も、当事者ならではの視点が詰まっている。

柴田さんは「私たちは口元がすごくデリケート。少し太すぎても、丸すぎても使いにくい。もちろん細すぎると危ないけれど、絶妙な先の細さと軽さ、滑りにくさにこだわった。コラボしたヤマチクには、通常より2倍細かいヤスリで削ってもらっている。作っている人が、色んな工夫をしてくれたという思いが伝わるものになっている」と、自信をのぞかせる。

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