【連載】企業と人権、その先へ(4)

株主総会において、気候変動対策の強化を求める株主提案が主に環境団体から相次いで出されたことが注目を集めた。昨年は、気候ネットワークがみずほファイナンシャルグループの株主総会において、パリ協定の目標に沿った投資を行うための経営戦略を記載した計画の開示を求め、結論としては否決されたものの、議決権を有する株主のうち34.5%がこれを支持し、気候変動対策に対して高い関心が寄せられていることが明らかとなった。気候ネットワークは、今年の6月には、今度は三菱UFJファイナンシャル・グループに対し、同様の計画を決定し開示することを求める株主提案を行なった。こちらも否決されたものの、賛成株主は速報値で23%であった。(佐藤 暁子・弁護士)

このように経営に対して積極的に意見を述べる「物言う株主」は、ESGの推進に向けた重要なアクターの一つである。社会に対するインパクト、つまりESGの「S」の価値軸を企業だけでは十分に実現できないとしたら、投資家が、多様な視点に基づいて具体的な提案をしていくことによって、これまでのあり方から脱却できる可能性は大いにある。

こういった物言う株主は気候変動だけに見られるのかというとそうとは限らない。例えば、Googleの親会社であるアルファベット社に対しては、自由権や人権の専門性をもつ人物を取締役として任命し、また、同社の違法・不当行為に対して声を上げた内部通報者を保護する方針を導入するよう求める株主提案がなされた。

この提案を支持した投資家は、グーグルやYouTubeの人種差別、性差別、ヘイト、暴力、誤情報に対する対応が不十分であることを理由としてあげる。

そのほか、ロイターに対する、アメリカ政府機関との契約によって懸念される人権問題に関連して潜在的に直面する課題や他のテクノロジー企業とのリスクコントロールの比較を含む人権リスク報告書の作成を求める株主提案も、可決には至らなかったものの、昨年の倍以上となる19%の支持を集めた。

議決権行使助言サービス最大手のアメリカのISSは、人権デューディリジェンスに関する株主提案に対する評価について、取締役会が明示的に人権課題を監督している場合には企業を支持する可能性が高いとしつつも、企業に対し、サプライチェーンにおけるコードオブコンダクトの遵守状況のモニタリングについて開示を促している。

ISSはより具体的には、事業会社が人権方針を策定したか、顕在化及び潜在的な人権への影響を特定及び評価するといった人権リスクの監督に責任を持つ委員会を設置しているかなどを見ると明示する。

さらには、企業の人権リスクアプローチの統合、施策の有効性のモニタリング、また、指導原則に基づくステークホルダーとのコミュニケーションも対象とし、CHRBといった既存の人権のベンチマークも参照すると示している。

このように、株主が積極的に人権に対する方針をモニタリング、提案していく動きは、今後さらに盛んになると考えられる。株主から「物を言われる」ことを恐れるのではなく、むしろ、株主の多様性を活かして、企業が社会に対し価値を発揮し、持続可能な社会へ貢献するためのステップと捉えるべきである。

サステナビリティにまつわる課題は日々更新され、企業はスピード感を持って取り組まなくてはならない。年に一度の株主総会は、取り組みの進度を報告し、フィードバックを受ける絶好の機会である。来年の株主総会シーズンでは、企業が自社の人権に対する取り組みを競い合うように報告する、そんな光景が見たい。