認定NPO法人 難民支援協会(JAR、東京・千代田)は12月22日、柳井正・ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長から、個人として、日本に逃れた難民への緊急生活支援のために1億円の寄付を受けたことを発表した。JARは主に来日直後の難民申請者で、政府の公的支援(保護費)にアクセスできず困窮する人たちへの支援に活用するという。(オルタナ副編集長=吉田広子)
JARによると、政府から支給される難民申請者向けの公的支援(保護費)は、受給までの待期期間が長いことなどの課題がある。保護費の申請後、実際に受け取ることができるまでには最低数カ月から半年以上かかる。
保護費支給の遅延は、2022年10月にコロナ禍にかかわる入国制限が緩和後、日本に逃れてくる難民が増えたことでより深刻になっているという。その結果、JARに来訪する難民の人数も急増した。月のべ600人(アフリカ、南アジア、中東など約70カ国)がJAR事務所に相談に来るが、十分な支援が提供できず、来日後に野宿を強いられる人も出ていた。
JARは、来訪する難民一人ひとりへのカウンセリングを通じてニーズを把握し、宿泊先や食料の提供、心身の不調をきたす方への診療の手配や医療機関への同行などを行う。対象となる人は、単身で逃れてくる人に加え、子どもを含む家族世帯や母子世帯など、脆弱性の高い人も含まれる。
■ 柳井正氏のコメント
世界の対立・分断が進む中、難民問題はますます深刻な状況に陥っています。この問題は私たちと無関係な遠い世界の話ではありません。本来は誰もが、平和で安定した生活を送ることのできる世の中でなければなりません。私は今回、やっとの思いで来日したものの、公的支援がなかなか受けられず、苦境に立たされている難民の方々への緊急生活支援として、寄付することを決めました。より多くの企業、個人の皆様がこの問題に関心を持ち、活動にご賛同いただけることを心から願っています。
■ 石川えり・難民支援協会代表理事のコメント
この度の柳井正様からのご寄付は、急増する難民申請者への緊急支援がひっ迫するなか、大変ありがたく、深く感謝いたします。大切に活用させていただきます。また、日本では「難民問題」が喫緊の社会課題の一つとして十分に認識されていないなか、柳井様が日本における難民問題についても注目し、経済界で先陣を切ってご支援くださっていることを心強く感じています。