その際、政府の動きも重要です。Yコンプレックスに話を戻すと、この事業は国交省が後ろ盾になった政府系のJOINが中核になっています。国連の人権指導原則でも、「人権を尊重する企業の責任」と並んで「人権を保護する国家の義務」が規定されています。これに基づき、日本政府には、企業とともに、ミャンマーの国軍に対し、人権を保護すべき国家の義務を果たすことを要求すべきです。
JOINは他にも国軍が掌握したミャンマー港湾公社とティワラ港穀物ターミナル事業、国有地でのヤンキン都市開発事業など4案件に出資(一部債務保証)をしており、取引相手の軍事政権に人権デュー・ディリジェンスを求める立場です。
米国企業の投資は多くありませんが、かつての軍事政権時代、民主化や少数民族に対する弾圧を理由に経済制裁を継続してきた米国は今回のクーデターで、軍事政権の閣僚、高官、国軍系企業を数回にわたって制裁対象とすると発表しています。ミャンマーとは歴史的につながりの深い日本も人権外交に力を入れ始め、2020年10月には「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP,2020-25)を策定、金融庁もコーポレートガバナンスコードに人権の尊重を求める規定を盛り込んでいます。人権外交では、企業へ働きかけるのと同時に政府自らも一緒に動く覚悟が必要です。