アップル、アマゾンなど米国IT大手が、本社のあるカリフォルニア州やシアトルでホームレス支援や低価格住宅を支援している。「高賃金労働者の流入が地域の家賃高騰を招いた“住宅危機”の要因」との批判に対応するためだ。昔からの住民が土地を去り、コロナの失業でホームレスも急増しているという。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

アップルとハウジングトラストシリコンバレーが資金を提供するカリフォルニア州ピッツバーグの退役軍人用の住宅

サンフランシスコやシリコンバレーなどIT大手企業本拠地の周辺では、家賃高騰が深刻だ。消防士、看護師、教師など、都市を機能させる昔からの住民が引越を余儀なくされ、不利益を被っている。そこへコロナウイルスの蔓延で失業者が増えホームレスが急増、コミュニティにも悪影響を及ぼしている。地域住民団体から住宅整備支援の要望が相次いだ。

カリフォルニア州の住宅危機の原因は、エリア内に1家族分の住宅しか建てられない「シングルファミリーゾーン(一戸建て規制)」というゾーニング規制、山火事による土地不足など、複数の要因が絡んでいるが、IT大手企業への批判は強まるばかりだ。

地域の批判をかわそうと、IT大手企業各社は、ホームレス支援やアフォーダブル(低価格)住宅建設、融資支援プログラムへの寄付などに乗り出した。

支援は2017年のアマゾンから始まる。アマゾン(アンディ・ジャシーCEO、本社:ワシントン州シアトル)は2010年のアマゾン本社移転以降の住宅価格と家賃の大幅上昇に対応するため、2017年から数百万ドル(数億円)を費やし、シアトルのダウンタウンの中心部でホームレスのための8階建ての宿泊施設を建設した。

2021年1月には、米国内の本社や拠点の周辺地域に20億ドル(約2060億円)を投じ、中低所得者向けのアフォーダブル住宅を5年間で2万戸建設すると発表した。

グーグル(サンダー・ピチャイCEO、本社:カリフォルニア州マウンテンビュー)は2019年6月、サンフランシスコのベイエリアでアフォーダブル住宅を増やすため、10億ドル(約1,100億円)を拠出、同社が所有する7億5000万ドル(約817億円)相当の土地を提供し、アフォーダブル住宅1万5000戸を建設した。

買い手への住宅ローン補助のため、2億5000万ドル(約270億円)の基金も設立。

フェイスブック(マーク・ザッカーバーグCEO、本社:カリフォルニア州メンローパーク)は2019年10月、住宅供給に10億ドル(約1,000億円)を提供することを発表した後、2020年12月には、カリフォルニア州最大のコミュニティ住宅基金を新たに設立、アフォーダブル住宅を最低2,000世帯建築するため、同基金に1.5億ドル(約155億円)を寄付すると表明した。

アップル(ティム・クックCEO、本社:カリフォルニア州クパチーノ)は2019年11月、「自分たちのせいで住宅価格が暴騰し、住宅危機が起きたことについて一市民として深刻な責任を感じており、対処する」と語り、25億米ドル(約2,720億円)規模の包括的なイニシアチブを発表した。

住宅建築に10億米ドル規模のファンド、初めての住宅購入者に10億ドルの支援、3億ドル相当の同社保有の土地の提供、ベイエリアの住宅建築に1.5億ドル規模のファンド、弱い立場にある人々の支援に5,000万ドルの寄付を準備する。

ただマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI=米大手コンサルティング会社)のリポートによると、これらの支援でも「焼け石に水」であるようだ。同レポートでは「カリフォルニア州では2025年までに今のペースの約3倍の350万戸の住宅建設が必要」で、そのコストは「1兆6000億ドル(約1700兆円)と異様な額になる」と試算している。