内閣府は、国が支出する全事業をPDCAサイクルの観点から見直す「行政レビュー」を11月8、9日に開いた。2013年の第1回から今年が9回目。今年は新型コロナワクチンとDXやプライバシーに関する問題提起が相次いだ。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

行政事業レビューとは、政府の全省庁が、全事業を対象に、執行実態を明らかにした上で点検の過程を見える化し、外部の視点を活用しながら点検し、結果を予算や執行等に反映させるもので、いわば「行政事業の総点検」だ。
今年のテーマは「感染再拡大に備えたコロナ対策の検証」(8日)と「デジタル社会の実現等」(9日)の2点だった。
政府から牧島かれんデジタル大臣行政改革担当内閣府特命大臣(規制改革)、小林史明デジタル副大臣兼内閣府副大臣、山田太郎デジタル大臣政務官兼内閣府大臣政務官が参加した。
冒頭牧島大臣から「今年の秋の行政事業レビューは、コロナ禍を踏まえ、行政組織、行政サービス、行政手続のあり方に重点を置きたい」と挨拶があった。
評価者は伊藤伸政策シンクタンク構想日本総括ディレクター、上村敏之関西学院大学経済学部教授 、大屋雄裕・慶応義塾大学法学部教授、高島宗一郎福岡市長、土居丈朗・慶応義塾大学経済学部教授の5名が務めた。
評価者からの問題提議は次の通り。
1)「厚生労働省からのコロナ対策通知文書は300通に及んだ。オンライン会議での説明やQ&A等をより充実して頂きたい」(高島市長)
2)「ワクチン接種券のデジタル化を検討したらどうか」(上村教授)
3)「ワクチンは日本に届いているのに地方に届いていない。何が原因なのか」(土居教授)
4)「厚生労働省のコロナ対策のQ&Aが更新されていなかった状況があった」(伊藤ディレクター)
5)「職員の少ない小規模自治体でも対応可能なワクチン接種の仕組みを作ることが重要だ」(大屋教授)
6)「接種に関わるフェイクニュースを削るかを考えるべきだ」(大屋教授)
7)「国がワクチン接種記録システム(VRS:Vaccination Record System)を提供し、市区町村が接種者情報および接種記録情報を管理している。VRSには、転居時などにマイナンバーを用いて他自治体に記録を照会できる機能があるが、マイナンバー法との関係で照会に当たって本人一人ひとりの同意が必要であり、非現実的だ」(福岡市長)
8)「プライバシーとマイナンバーの整理が不十分だ。方法は2つ。行政を信頼し業務上必要の視点でマイナンバー照会の権限を認めるか。個人のマイナポータルを活用するかだ」(土居教授)」
9)「フェイクニュースは何が正しいかを判断するのは難しいが、何が間違いかはわかる」(大屋教授)
10)「国と地方自治体の情報共有はコロナ対策だけでなく、災害対応や子供虐待対応にも横展開可能だ」(上村教授)