児童養護施設出身のモデル田中麗華さんが12月6日、自身の生い立ちをまとめた著書『児童養護施設という私のおうち』(旬報社)を発売します。田中さんは7歳から18歳まで都内の児童養護施設で育ちました。現在は、モデル活動に加えて、ユーチューバーとして、親元を離れて暮らす子どもたちへの理解の輪を広げる活動を行っています。(オルタナS編集長=池田 真隆)

12月6日発売、200ページ、定価 1,600円(税抜)

著書では、施設で暮らすことになった経緯から施設内での日常、卒園後の苦悩などを赤裸々に明かしています。児童養護施設の存在は多くの人が認知していますが、実際に園内で子どもたちがどのように暮らしているのか理解している人は少ないでしょう。著書は、児童養護施設とそこで育つ子どもの全体像を知るための「入門書」です。

2018年に田中さんを取材したのですが、施設で暮らす子どもたちのことを「社会的弱者」と言う世の中に違和感があると強調していました。

「私たちのことを知らないから、施設出身者を一様に社会的弱者とまとめているのではないか。施設出身者だから、苦労したと決めつけてはいないか。それぞれ異なる境遇を育ってきたので、一人ひとりとしっかりと向き合い、話を聞いてほしい」と語っていたことが印象に残っています。

そんな、田中さんの著書の一部を先行公開します。
第3回は、「高校生になって感じた職員との距離感」です。
*第2回2週間の不登校と学校に行けるようになった友人の一言からの続きです。

高校生になり、髪も伸ばすように

田中 麗華著『児童養護施設という私のおうち』(旬報社)から一部抜粋
職員たちとの関係

高校生ぐらいになると施設の先生たちとも年齢が近くなります。保護者、親というよりも「お姉さん」「お兄さん」のような感覚もありました。さらに、ちょっと人生の話とかをするようになると距離感的にも縮まってきます。中には大学時代に失恋した話なんかをしてくれた先生もいました(笑)。

逆に、合わない先生も当然いました。先生は勤務だからそこにいるのは仕方がないけれど、私の生活する家でもある。でも、毎日イライラしていたくはない。

じゃあ、必要最低限の関わりだけ、と思って行動すればいい、と思うようになります。特に高校生ぐらいになると、そういうマインドになっていました。

仲良しだった中野先生に聞いたんですが、私がなにか気に食わないところがあった新人の男の先生がいたらしくて、モップかなにかの棒を持って戦っていたのを見た、って。

ずいぶんとやんちゃな話ですが(笑)、どういう状況なのか、いまでは考えてもわからないけど、それほど嫌いだったっていうことでしょうね……。自分の考えを押しつけようとする人やズカズカと他人の領域に入ってこようとする人は苦手でしたね……。

あとはたまに、施設を抜け出したりもしていましたね。本当は施設の駐車場に隠れていたんだけど、出て行っちゃった風を装って困らせるとか、そんなこともしていたっけ(笑)。

感情が不安定でイライラしがちな思春期には、結構ぶつかっていたみたいです。大人になって振り返ってみると、施設の先生たちって本当に大変なお仕事。子どもたちの気持ちを受け止めなくてはいけない、「感情」をあつかう労働ですよね。

複雑な背景を持つ子どもたちもいて、深刻な過去に一緒に向き合わなくてはいけないこともあるので、とても大変なお仕事だなと思っています。

また、職員不足という点では、児童養護施設で過ごした11年間で11人の職員が1年以内に離職しています。1年に1人は辞めていたことになりますね……。(第4回はこちら

施設の子どもの「学ぶ権利」 *クリックすると拡大します

★★★
田中さんは現在、クラウドファンディングに挑戦中です。集めた資金で、この本を子ども支援団体や小中学校に寄贈します。詳しくはこちら