2021年5月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)の改正法が成立し、国や地方公共団体だけではなく、民間事業者にも「合理的配慮」の提供が義務付けられることになった。公布日の2021年6月4日から3年以内に施行される。そもそも合理的配慮とは何か、企業にはどのような対応が求められているのか。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「合理的配慮」とは、障がい者と障がい者でない人との均等な機会を確保するための措置で、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害や困難を取り除くための配慮を意味する。

この合理的配慮の提供は、「障害者雇用促進法」と「障害者差別解消法」で法的義務として定められている。

2016年4月に施行された改正障害者雇用促進法では、国・地方公共団体に加え、法律で雇用を義務付けられた民間企業(常時雇用者43.5人以上)に対し、雇用分野での合理的配慮の提供が義務付けられている。

過重な負担にならない範囲で、均等な待遇の確保または障がい者が能力を発揮するために必要な措置を講じる必要がある。

一方、改正障害者差別解消法では、すべての事業者が対象となり、過重な負担がない範囲で、障がい者から何らかの配慮を求められた場合、社会的障壁を取り除く配慮を行わなくてはいけない。

例えば、店舗や宿泊施設などで車イス用の簡易スロープを設置したり、聴覚に障がいがある人向けに筆談を用意したり、視覚障がいがある人に対してタッチパネル操作を代行したりするといったことだ。ただし、違反があった場合でも直ちに罰則が課されることはない。

厚生労働省は中央省庁として初めて、「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)」のパブリックコメント(意見の募集)で、「手話」を撮影した動画でも受け付けることを表明した。

厚労省は12月10日から同案件のパブコメを開始したが、当初は意見提出フォームなどを通じた「日本語」のみでの受け付けだった。聴覚に障がいがある当事者団体らの要望を受けて実現した。これも合理的配慮の一環と言える。

障がい者の約半数が主張せず

社会のユニバーサルデザイン化に取り組むミライロ(大阪市)は2021年10月、有識者を招いて「民間事業者による合理的配慮提供の推進委員会」を発足。同委員会は、約1000人の障がい者と、300の事業者に対し、合理的配慮に関する実態調査を実施した。その結果、障がいがある当事者が合理的配慮の提供がなされていないと感じた場合でも、約半数が「何もしない」と回答した。

これに対し、ミライロは「当事者がどのような事を求めているのか、事業者側から障がいのある方々との対話の機会を設けたり、アンケートを活用したりするなど、積極的に声を収集していく姿勢が必要だ」とまとめている。

内閣府は、合理的配慮の具体的事例をまとめた事例集をウェブサイトで公開している。