政府が昨年12月24日に発表した「SDGsアクションプラン2022」は様々な意味で進化している。政策は過去の政策の積み重ねと新規から形成されるが、それがよく表れた政府文書となった。筆者は2017年12月発表の「SDGsアクションプラン2018」からウォッチしてきたが、今回の特色を探りたい。(千葉商科大学基盤教育機構・教授/ESG/SDGsコンサルタント=笹谷 秀光)

アクションプランが文章化された意義

「SDGsアクションプラン2022」には「全ての人が生きがいを感じられる、新しい社会へ」という副題がついているが、重要な点は、プランが文章化されたことだ。

SDGsアクションプラン2021までは、すべて、いわゆるパワーポイントの「ポンチ絵的な」整理であった。それに比べ今回は、文章になっている。

ポンチ絵的な整理はわかりやすいが、解釈の余地が生まれる整理であり、政府文書としというより説明資料だ。筆者の31年間にわたる農林水産省などでの行政経験から見ると、やはり、政策内容は文章化されることで「格が上がる」。文章は解釈の余地が少ないからだ。また、文章化したので、これまで曖昧だった項目間の関係もすっきりと整理された。

一般には、パワーポイントに慣れているので気づきにくいかもしれないが、ここに大きな違いがある。

政府文書としての文章化の過程では、各省間の調整を経ながら、いわゆるドラフティングが行われたことであろう。この過程で取りまとめの事務局との間で、また、責任者の決裁過程でも、もまれた文章になっているはずだ。このことは評価される点だと思う。

SDGsの主流化の加速

せっかく文書化されたのでよく文書本文をよく読んでみたい。概要版だけで分かったような気になるのはまずい。主観が入ったまとめの整理になりがちだ。

内容面でも重要な現況認識が盛り込まれている。特に次の点に注目したい。

「政府としては、2023 年に日本が G7 議長国を務め、国連で SDG サミットやユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハイレベル会合等の SDGs に関する大きな節目の会合が開催されることも念頭に、2022年はSDGsの達成に向けて国内実施・国際協力をより一層加速するという決意のもと、『SDGs アクションプラン 2022』を定める」。

ここに SDGs が国際共通言語であることの特色が出ている。 G7での主要な議題として浮上し、日本が議長国として議論をリードできるからだ。

いま、世界では、政治面、経済面など様々な面で、国際協調が求められる一方、ヘゲモニー争いがある中で、日本として 「SDGs 先進国」を打ち出す戦略が重要だ。2025年にはSDGsをテーマとする大阪・関西万博も控えている。

安倍政権時代からはぐくんできたアクションプランの進化を活かして世界に向けて発信できる局面に入りつつあるということだ。

これまでSDGsに関し日本はスロースターターだったと思うが、このアクションプランでも指摘しているとおり、「SDGs 採択から 6 年が経ち、日本国内で SDGs に関する認知度は大きく高まり、ESG 投資の拡大などを受けて、企業経営に SDGs が浸透した」。

また、「学習指導要領に持続可能な開発のための教育(ESD)の理念が盛り込まれたり、再エネ導入が着実に進展したりするなど、日本国内でSDGs の考え方が浸透してきている。」

この評価は、昨年は「SDGs」が「現代用語の基礎知識」選の「ユーキャン新語・流行語大賞」(第38回)で 2021年ノミネート語30選の一角に入ったり、小学館DIMEのトレンド大賞に選定されたこととも符合する。

■5つのPとSDGs アクションプラン

SDGs アクションプランは、SDGs 実施指針に基づき、2030 年までに目標を達成するために、「優先課題 8 分野」において政府が行う具体的な施策やその予算額を整理し、各事業の実施によるSDGs への貢献を「見える化」することを目的として策定されている。

「SDGs アクションプラン 2022」では、「2030 アジェンダ」に掲げられている 5 つの P(People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、 Partnership(パートナーシップ))に基づき、重点的課題を整理した。

今回、改めて「2030 アジェンダ」を提示し、5つの Pで整理したこともSDGsの原点に戻る意味で重要だ。

最近、ともすれば 、SDGs といえば17色のバッジとか、17のマークを想起しがちな傾向がある中で、重要なのは「我々は世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」という国連合意文書であり、この35ページの文書の中盤15ページを占めるものがSDGsであることを再確認させるからだ。SDGsは国連加盟193か国の合意がある文書に基づくからこそ、世界に通用する共通言語なのである。

SDGs 達成に向けては、SDGs 推進本部の下、関係府省庁が一体となって、国内外のあらゆる分野の関係者と連携し、国民・市民一人ひとりが SDGs を自分事として捉えて取組を進めていくことが重要、という記述もある。

この「自分事」という点が重要だ。市民社会や有識者、民間企業、国際機関等の関係者が集まる SDGs 推進円卓会議を中心に、国内外のあらゆる関係者との連携を促進していくと必要がある。

2023 年の SDGs実施指針改定を念頭に、2022 年中に幅広いステークホルダーとの意見交換を行うという予定になっている。その視点からも、このアクションプラン2022はよく分析する価値がある。