小泉純一郎、細川護熙、菅直人、鳩山由紀夫、村山富市の元首相5人は2月3日、山口壮環境相宛に公開質問書を出した。原発事故と福島県内で発症した小児甲状腺がんの因果関係を問う内容だ。「小児甲状腺がんと放射線の影響は関係ない」とする山口環境相に対して、5人の元首相は、福島第一原発事故の前と後では、小児甲状腺がんの発症率が70倍も違うことを挙げ、山口環境相に発言の根拠を求めた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

小泉純一郎氏と菅直人氏が1月27日に主席した日本外国特派員協会での記者会見

5人の元首相と山口環境相が文書で応酬するようになった発端は、1月27日に元首相たちが欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長宛に出した共同声明にある。その声明では、EUタクソノミーから原発を除外するように求めていた。

EUタクソノミーとは、EUが持続可能な社会・経済につながる経済活動だと認定したものに与える「基準」だ。EUタクソノミーに選ばれた経済活動は、EUの「お墨付き」を得たことになる。2050年にカーボンニュートラルを掲げるEUが目標の達成に向けて、投資判断の基準を明確化し、グリーンな投資を促すことが狙いだ。

欧州員会は1月1日に原発をEUタクソノミーに入れる方針を示しており、5人の元首相はこの方針に対して、1月27日に共同声明を出した。声明では、EUタクソノミーから原発を除外するように求めた。

焦点になったのは、その声明に書かれた「福島県内の多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しみ」という記載だ。この記載に対して、2月1日、山口環境相は元首相らに対して、「小児甲状腺がんと放射線の影響は関係ない」と抗議文を出した。

「関係ない」と抗議した山口環境相の抗議文では、その根拠としてこう書いてある。

「福島県が実施している甲状腺検査により見つかった甲状腺がんについては、福島県の県民健康調査検討委員会やUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)などの専門家会議により、現時点では放射線の影響とは考えにくいという趣旨の評価がなされています。」(原文まま)

2月3日にはこの抗議文に対して、5人の元首相は公開質問を山口環境相宛に出した。その文書では、小児甲状腺がんは原発事故前は年間100万人に一人程度の発病しかなかったが、事故から10年で、(事故当時)福島県内で18 歳以下だった38万人中266人が発症し、222人が甲状腺摘出手術を受けたとして、発症率の差は70倍になると強調した。

その上で、山口環境相に2つ質問した。一つは、発症率が70倍に上がったというファクトが出ているのにも関わらず、「多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しみ」という事実を否定する理由について聞いた。

もう一つは、266人の小児甲状腺がんの原因が原発事故由来の放射線被ばくでないとするならば、環境省は266人の小児甲状腺がんの原因は何だと主張・立証するのかを聞いた。

この2つの質問に関しては2月10日までに返答を求めている。