ミャンマーの僻地・無医村「ミャウンミャ」から②

2021年4月、事務所で泥棒未遂が起きました。2015年にミャンマーに移り住んで初めてのことでした。誰かが鉄格子の入ったガラス窓を破り、鍵をこじ開けて入ろうとしたのです。(NPO法人ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会「MFCG」代表理事・医師・気功師・名知仁子)

村を巡回し、コロナ感染予防のポイントを伝える

名知仁子(なち・さとこ)

新潟県出身。1988年、獨協医科大学卒業。「国境なき医師団」でミャンマー・カレン族やロヒンギャ族に対する医療支援、外務省ODA団体「Japan Platform」ではイラク戦争で難民となったクルド人への難民緊急援助などを行う。2008年にMFCGの前身となる任意団体「ミャンマー クリニック菜園開設基金」を設立。15年ミャンマーに移住。

■インフレで生活必需品の値段が3倍以上に

泥棒未遂は幸い大事に至りませんでしたが、困窮した誰かが止むに止まれず、事務所の物を盗んで売ろうとしたのでしょう。ミャンマーでは、片方しかないサンダルでのような、日本ではおよそ「商品」と呼べないようなものでさえ売れるのですから。

新型コロナウイルス感染症は、世界中を巻き込みました。ここミャンマーでも、ステイ・ホームを強いられた人々は商売を継続できなくなり、経済は落ち込みました。

そこに追い打ちをかけるように2021年2月1日、突然のクーデターが発生。コロナと政変のダブルパンチは、1日2,000チャット(約140円)の収入で暮らしていた庶民に困窮をもたらしました。

混乱はインフレを引き起こし、卵は110チャット(7.7円/1個)から180チャット(12.6円)へ。標準的な5人〜8人の家族が食べていくのは、もはや不可能です。

事務所では、メインテナンスのために購入した接着剤の価格が、2月に700チャット(約49円)だったのが3月に入ると2,300チャット(約161円)に。たった2週間で3倍以上に値上がりしました。

ガソリンも同様に、20年11月時点で1リットル560チャット(約39円)だったのが22年3月現在は1,850チャット(約130円)に。価格高騰が収まる気配は一向にありません。

■野菜を盗む村人に空き缶やペットボトルを求める子どもたち