「社会貢献型自販機」続々と

日本財団の「夢の自動販売機」。設置・置き換えは無料で、設置者の負担は電気代のみだ

キリンビバレッジと社会福祉法人墨田区社会福祉協議会(東京・墨田)は、売上の一部を寄付する自動販売機の設置を3月1日に開始する。売上が低迷している自販機だが、広く社会貢献意識を高めるツールとして活用する事例が登場している。

日本自動販売機工業会(東京・港)の調査によると、09年末時点で、飲料自販機(清涼飲料、牛乳、コーヒー・ココア、酒・ビール)の普及台数は、256 万 5100 台。たばこや食品など含めた自販機全体の 49.1%に相当する。飲料自販機の台数は、前年より 0.9%減少、年間自販金額は、9.2%減少し、2兆3000億円だった。

そんななか、売上の一部が寄付される「社会貢献型自販機」が増えているようだ。

墨田区社会福祉協議会は、地域住民やNPO、行政機関の協力のもと、地域福祉を推進する社会福祉団体だ。キリンビバレッジと提携し、「つながりすみだ、応援」自販機の第一号を「すみだボランティアセンター」に設置する。

この自販機で飲料を購入すると、売上げの1%程度が同協議会を通じて墨田区内の福祉に使われる。集まった寄付金で車イスや杖を購入し、東京スカイツリー内の商業施設に配置することを検討している。

08年度から寄付付き飲料自販機の設置や置き換えを推進しているのが日本財団(東京・港)だ。同財団は、1本につき10円をNPOに寄付する「夢の自動販売機」を全国的に展開している。集まった寄付金は、犯罪被害者支援やアジア小学校建設プロジェクトなどを行うNPOの活動費用に充てられる。2011年1月末までに全国に864台設置し、すでに5100万円を超える寄付金を集めた。

ハイチ地震の緊急支援に活用された事例もある。2010年2月、全国約1000台の自販機で、「ゆび募金」活動を行うジャパン・カインドネス協会(東京都国立市)は、ハイチ緊急支援のために、国連UNHCR協会(東京・港)を通じて被災者に100万円を寄付した。「ゆび募金」とは、飲料を1本購入すると自動販売機設置先と飲料メーカーから1円ずつの計2円が寄付金になる募金の仕組みである。

自販機でマラリア撲滅プロジェクトのための募金を集めているのが、大阪青年会議所だ。大阪青年会議所では、サントリーフーズ近畿支社の協力のもと、2010年11月1日から6日までの国際青年会議所世界会議開催中、マラリア撲滅に貢献する自販機を設置した。募金額は、6日間で16万円。その後、1000台設置を目指し、全国各地の青年会議所と連携し、全国的に広めようとしている。

日本の寄付市場は一兆円だが、誰でも気軽に寄付できる仕組みとして、「社会貢献型自販機」が広がりつつある。どこにでもある自販機だからこそ、社会への参画意識を促すツールになるだろう。(オルタナ編集部 吉田広子)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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