感染症に日本や世界はどう向き合うべきか――。国際結核デーの3月24日、こんなテーマのフォーラムが開かれた。政界やメディア、社会貢献団体などからキーパーソンが登壇して、「感染症とサステナブル経営」などを切り口に議論した。新型コロナの世界的なパンデミックで改めて感染症には国境がないことが分かった。繁栄のカギは「保健」だ。(日本国際交流センター)

感染症との向き合い方について話した「FGFJグローバル感染症フォーラム~コロナの先に築く未来」

同フォーラムを主催したのは、公益財団法人日本国際交流センター内にあるグローバルファンド日本委員会。同会は、低・中所得国の三大感染症対策を支える官民連携基金である「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」を支援する日本の民間イニシアティブだ。

フォーラムの名称は「FGFJグローバル感染症フォーラム~コロナの先に築く未来」で、政界からは鈴木貴子外務副大臣がメディア業界からはキャスターの膳場貴子氏、堀潤氏が登壇した。さらに、作家の乙武洋匡氏、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、企業、医療関係者ら様々な業界のリーダーが集まった。

開会の挨拶で、鈴木外務副大臣は「感染症には国境がない」とし、「それは予防・診断・治療にも国境がないということ」と強調した。

そのうえで、「保健」分野を強化することの社会的意義を語った。「保健は繁栄の鍵であるというのがグローバルファンドが生まれた沖縄サミットでの言葉だった。みなさんとともに、考えるだけではなく、行動していきたい。近江商人の3方よしに地球よし、未来よしを足した5方よしを目指していきたい」。

セッション1のテーマは「地球の未来の危機に向けて日本は何ができるのか」。グローバル資本主義は気候変動を悪化させ、感染症によるシンデミック(複数のパンデミックの同時進行)によって多大な影響を受けている。地球の未来の危機的状況に日本は何をすべきか登壇者が考えを話した。

パネリストは、古川元久・衆議院議員(国民民主党)(グローバルファンド日本委員会議員タスクフォース共同議長)と國井修・公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金CEO(元グローバルファンド戦略・投資・効果局長)の二人。聞き手は乙武洋匡氏が務めた。

日本もいまある問題点を見つめることだけではなく、世界を見ながら、前向きな夢を見ながら前に進むこと、少し視点を引いて、時間と空間を大きくとらえて発想することの大切さについて話は及んだ。 

セッション2では、「感染症とサステナブル経営」について語り合った。登壇したのは、西本麗・広栄化学社長(住友化学顧問)、松木俊哉・日本電気(NEC)執行役常務、柏倉美保子・ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本常駐代表、薗田綾子・クレアン社長(サステナビリティ日本フォーラム事務局長)。聞き手はジャーナリストの堀潤氏が務めた。

世界的なパンデミックを止めるには、グローバルヘルス領域で企業の技術的なイノベーションが求められるが、すぐに市場化しにくい領域でもある。だからこそ「官民連携基金などが重要である」(ゲイツ財団の柏倉氏)、「AIテクノロジーでのワクチン開発や指紋認証による乳幼児のワクチン供給技術の開発、ゲノム解析医療などを通じた貢献が重要」(NECの松木常務)――などの発言が印象に残った。

投資を促すために、企業の財務情報にこうしたグローバルヘルス領域への貢献を反映させ、投資家がそれを評価する仕組みの重要性も語り合った。

セッション3では、「結核」について語った。聞き手にキャスターの膳場貴子氏を迎え、宮野真輔・国立国際医療研究センター(NCGM) 国際医療協力局医師(グローバルファンド技術審査委員会メンバー/国際協力機構(JICA) ミャンマー保健スポーツ省感染症対策アドバイザー)と伊藤聡子氏・日本国際交流センター執行理事(グローバルファンド日本委員会事務局長)の二人がパネリストを務めた。

同フォーラムにあわせて初めて公開した国際感染症に関する意識調査の結果では92.3%の人が「コロナ禍を経験して、感染症には国境がないことがわかった」と回答しており、88.9%が「感染症の拡大を防ぐためには、世界中の人々の助け合いが重要だと思うようになった」と回答した。

78.5%が開発途上国の感染症に対する「支援を行うべき」と考え、44.3%が日本企業への期待として、「インフラが整っていない途上国の現場で役立つ画期的な製品の開発」とした。

日本のODAについては、国民意識調査でも国会議員調査でも保健医療や教育分野への支援を優先すべきという声が多い。しかし、実際にはG7平均に比べて日本の保健分野の国際協力の割合は低い。米国では保健医療分野はODA全体の23.9%だが、日本は5.4%に過ぎない。

長期化するコロナ禍で2020年の死亡者数は194万人に及ぶ。同じ年の3大感染症(エイズ、マラリア、結核)の死亡者数は250万人なので、平時の感染症対策を強化することが、コロナのようなパンデミックの対策にもつながる。

世界的に感染症への意識が高まっている今こそ、「世界を守り、日本を守り、自分を守る」という発想で世界が連帯して全ての感染症の解決を図っていくことの重要性を認識し合った。

クロージングで膳場貴子氏は、このコロナ禍を超えて、感染症への意識を進化させるアクションとして、「議員にメールを送る」「国際感染症の情報をシェアする」といった行動が大切だとまとめた。

グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)

 2000年G8九州沖縄サミットの成果として誕生した国際感染症対策専門の官民連携基金。年間40億ドルを約130ケ国のエイズ、結核、マラリア対策、保健システム強化の支援につなげる

※「コロナの先の世界の見方」連続講座シリーズ