株式会社オルタナは4月20日に「サステナビリティ部員塾」18期上期第1回をオンラインで開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①CSR SDGs ESGの基本的な理解

時間:10:00〜11:45
講師:森 摂(株式会社オルタナ 代表取締役・オルタナ編集長)

サステナビリティ経営のキーワードとなるCSR、SDGs、ESGと、これらが需要な背景について、基本的なポイントを解説した。

3つはいずれも企業のサステナビリティ領域をカバーしている点は同じで、どこからの要請なのかが異なる。

・CSR:社会からの要請
・SDGs:国連・NGOからの要請
・ESG:投資家・株主からの要請

続いてサステナビリティ経営への理解を深めるために、歴史的な背景を解説。サステナビリティ経営という考え方は、第7代国連事務総長のコフィ・アナン氏(1997〜2006年在任)が生んだ「4つの贈り物」を機に急速に普及してきた。

1)MDGs(ミレニアム開発目標)
2)UNGC(国連グローバルコンパクト)
3)PRI(国連責任投資原則)
4)UNGP(国連ビジネスと人権指導原則)

2019年にはビジネス・ラウンドテーブル(日本の経団連に相当する米国の団体)が「株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換」を宣言し、世界最大の資産運用会社・ブラックロックが「企業理念が長期的な収益性の源泉となる」と書簡で表明した。

実は60年以上前から、現在につながる流れが生まれていた。1950年代に水俣病などの公害問題が顕在化し、60年にはノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏が地球温暖化の研究を始めた。

72年にローマクラブが「成長の限界」を発表し、87年にはブルントラント委員会の「東京宣言」ではじめて「サステナブル・ディベロップメント=持続可能な開発」という言葉が使われた。これ以来「ディベロップメント=開発」という訳が定着しているが、本来は開発よりも「発展」の意味合いが強い。

企業のサステナビリティ経営を後押ししてきたのは、NGOと市民。NGOを支えるのは市民であり、投資をしたり年金を拠出したりするのも、全ての動きは市民から始まっている。このポイントはあまり日本で語られていないので注視すべき。

企業がサステナビリティ経営を進めるにあたり大切なのが「アウトサイド・イン」の考え方。これは社会課題を起点にビジネスを創り出すことを意味し「未来の顧客」に新しい商品やサービスを提供することで、自社収益と社会繁栄の両立という新たなベクトルを生む。

サステナビリティ経営を進めることは、自社が「何のために社会にあるのか」というパーパス(存在意義)を問い直す機会になる。

ミニプレゼンテーション:経営者のフロン対策

時間:11:45〜12:00
講師:作井 正人氏(一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構(JRECO) 専務理事)

オゾン層破壊で問題になった冷凍機の冷媒をフロンから「代替フロン」にシフトして20年以上が経った。フロン対策は過去の問題になったと思われがちだが、新たな問題が生じていると作井氏は指摘。経営課題として取り組むべきと警鐘を鳴らした。

代替フロンは温暖化係数がCO2の2000倍もあり、京都議定書で削減すべき対象に指定。2020年の「フロン排出規制法」では適切な管理をしないと刑事罰が科されるようになり、サステナビリティ経営にとっては避けて通れない課題になっている。

代替フロンの生産可能枠は2024年に60%、2036年に85%と段階的に削減されていく。いずれ開発中の新冷媒に対応する必要があり、そのためには国内の3000万台の冷凍機を入れ替えなければならない。

東証一部1350社の環境関連レポートを調べたところ、フロン排出規制方について何らかの記載があったのは87社(6.4%)に過ぎなかった。経営者はフロン対策に取り組むことが喫緊の課題であり、取り組むことで企業価値の向上にもつなげることができる。

②社会から見た企業の役割/SDGs概論

時間: 13:00~14:15
講師: 町井 則雄 氏 (株式会社シンカ 代表取締役社長/株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

国内最大規模の助成実績を誇る日本財団で数々の社会課題解決型プロジェクトを企画した町井氏は、SDGsが叫ばれる時代になったが、社会から企業を見たときに「二極化」に注目すべきと切り出した。人権では長期化するコロナ禍で欧米とアジア人の対立が生まれ、冨の格差、さらにはテクノロジーの格差も生まれたと説明した。

この時代をストレスフルな社会ととらえるのではなく、チャンスと感じられるかがカギだと言う。チャンスととらえるためのヒントがSDGsにあるとし、二極化が進む社会でどのようにSDGsを読み解くのか人口増加問題や水不足、エネルギーシフトなどの観点から説明した。

抑えるべき今後10年間のトレンドとして、EUでの炭素に価格付けする動きや、石炭・石油産業からの投融資の撤退(ダイベストメント)、AIなど最先端テクノロジーで変わる雇用形態などを紹介した。

世界的な視野から企業の役割を話した後、日本の課題にも触れた。日本では世界と違い、少子高齢化が進み、都市と地方の格差が止まらない。「日本社会の対応力は減少して、課題は深刻化する」と強調した。

一つのセクターだけでは解決できないとして、産官民学での「総働」での新しい市場開拓が必要だと話した。そのために企業が力を入れることとして、SDGsとESGを組織戦略家できる社員の育成だと話した。

③ワークショップ:未理解点の洗い出し

時間: 14:30~15:45
講師: 森 摂(株式会社オルタナ 代表取締役・編集長)、町井則雄氏(株式会社シンカ代表取締役)、室井孝之 (株式会社オルタナ オルタナ総研フェロー)

1時間目、2時間目の講義で分からなかった点などを参加者がグループに分かれて話し合い、講師陣が質問に答えるワークショップを行った。

初めに森が1限目の補足講義を行った。

・タンジブル(有形)インタンジブル(無形)の資産
これまでは有形資産が企業資産と思われていたが、これからはブランド価値や信頼といった無形資産に注目が集まっている。

サステナビリティ経営はサッカーに似ている
野球は攻守が明確に分かれているが、サッカーは攻守が同時である。リスクが多いと思っていたらそこにチャンスがある。グローバル感覚も重要で、世界のサッカー人口は野球よりも多い。アメリカのメジャーリーグだけ見ていてもだめなのだ。

・スピードが命、大事なのは脊髄反射
近年グローバル企業が一斉に動く傾向が見られる。このスピード、流れに日本企業も素早く対応できるかが大事だ。

質疑応答では、以下のような質問が寄せられた。

Q:SDGsの社内浸透はどうしたら良いのか。

A:ただやりましょうと言うのでは響かない。自社のビジネスチャンスになる、リスクヘッジにもなると説明した方が関心を持ってもらえる。部署横断型の取り組みで、C S R部がまたきたと思われないよう、どうしたら聞いてもらえるかを考えると良い。(町井氏)

A:サステナビリティに取り組まないとビジネスができないという状況になると企業も変わる。ナイキ、パタゴニアなどは自身が世界を変えると取り組んできた。そこでスピードが変わった。サステナブルなものを作るのは大変だ。社内の説得も難しい。しかし、それをやらないと売れないとなってガラッと変わったというケースがある。(大喜多 一範・オルタナ総研フェロー)

Q:バックキャストやフォアキャストは技術的に擦り合わないと社内で反発がある。そのギャップをどう乗り越えたらいいのか。

A:経営で考えると、日本はできることから着々とやる「フォアキャスト」が主流だが、バックキャストはアンビシャス(野心的)な目標を立てることが先決と考える。ダメだったら見直せばいいという発想で、まずはゴールを置くマインドが大事だ。(森)

Q:MDGsからSDGsにそのまま移行したのか

A:引き継がれたものもあるが、新しく入ったものもある。より充実した内容になった。169のターゲットを見るとより理解できる(森)

Q:SDGsは2030年まで。その先はどうなるのか

A:これは推測だが、次の仕組みができるのではないか。または2040年まで延長するなどの可能性もある。(森)

④企業事例:ブリヂストンのサステナビリティ戦略

時間:16:00〜17:15  
講師:稲継明宏氏(株式会社ブリヂストンGサステナビリティ部門長)

ブリヂストンは1931年設立。連結売上3兆円強、その8割がタイヤ事業を行う業界のリーディングカンパニーだ。稲継氏から、なぜブリヂストンはサステナビリティ経営に取り組むのかを講義いただいた。

世界では気候変動、不平等などの課題が出てきている。ブリヂストンは、より良い暮らし、地球と共生を実現するためにサステナビリティに取り組んでいる。

取り組む際にはトランスフォームを大事にしている。社会の変革に合わせ自社も変化しなければならない。そうでなければ企業が持続できない。それが競争優位につながり、社会の持続可能な発展にもつながる。

社是の「最高の品質で社会に貢献」が基本で、2050年サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供できる会社を目指している。

未来からの信任を得ながら経営を進める軸として、8つの価値を「ブリヂストンE8コミットメント」として取り組んでいる。2030年までを第3の創業期と捉え、ビジョンを実現するための企業活動にサステナビリティを組み込んだ。

ブリヂストンがコミットする「E8」は、以下の8つを意味する。


・Energy:カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えることにコミットする。
・Ecology:持続可能なタイヤとソリューションの普及を通じ、より良い地球環境を将来世代に引き継ぐことにコミットする。
・Efficiency:モビリティを支え、オペレーションの生産性を最大化することにコミットする。
・Extension:人とモノの移動を止めず、さらにその革新を支えていくことにコミットする。
・Economy:モビリティとオペレーションの経済価値を最大化することにコミットする。
・Emotion:心動かすモビリティ体験を支えることにコミットする。
・Ease:より安心で心地よいモビリティライフを支えることにコミットする。
・Empwerment:すべての人が自分らしい毎日を歩める社会づくりにコミットする。

タイヤ事業を中心にビジネスモデルを構築している。その中でカーボンニュートラル化に向けたロードマップの明確化を行った。タイヤを長持ちさせることで省資源化し、使用段階でも持続可能にする。

サーキュラーエコノミーにも取り組む。廃棄タイヤは回収し、90%はリサイクルされるが、熱回収(サーマルリカバリー)が中心だ。今後いかにマテリアルリサイクルできるか、ビジネスとして成り立たせるかが課題だ。

最後に参加者との質疑応答を行った。

Q:サステナビリティ経営を進める上で社内浸透をどう進めているか。

A:従業員の理解がないと進まない。トップダウンが強い会社なら経営に統合して進める取り組みを表彰するなど認知を広める、企業文化に合った取り組みなどを組み合わせる。伝える際には、分かりやすい言葉に「翻訳」することが大事だ。専門用語やカタカナを使わないように意識している。

Q:タイヤはカスが出る。避けられないマイナス面をどう考えているか。

A:タイヤと路面の摩耗粉塵がどう環境に影響しているのかはまだ未解明の部分が多い。今業界として、サイエンスベースでそうした粉塵が路面に留まっているのか、海まで流れているのかなどの調査研究を続けている。そうした業界として追求していくことが一つ。

もう一つは、いかにタイヤの耐久性を上げていくか。生分解性にするなど、個別の企業でできることがある。いずれにしても、課題に向き合い取り組むことが大事だ。