市販弁当や冷凍食品、「チン」で死産リスク上昇説

記事のポイント
①プラスチック容器のまま弁当や冷凍食品を電子レンジにかけることで、有害物質が食品を汚染している可能性
②環境脳神経科学情報センターの木村―黒田純子副代表が、溶出する可能性のある有害物質とそれから身を守る方法を解説
③市販弁当や冷凍食品で妊婦の死産リスクが上昇との研究結果が報告されている

名古屋市立大学の研究報告が波紋を広げている。市販弁当や冷凍食品をよく食べる妊婦は死産のリスクが高まるという内容だ。死産リスク上昇の明確な原因は不明だが、危険性はどこに潜んでいるのか。また、どう身を守ったら良いのだろうか。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

電子レンジで温めたプラスチック容器から溶出した化学物質が身体に悪影響を与える可能性

電子レンジが有害物質溶出の引き金か

同大学の研究チームは、化学物質の曝露は計測していないので死産リスク上昇の原因は不明であるとしている。一方、市販弁当や冷凍食品を電子レンジで温めることで、環境ホルモン作用をもつビスフェノールA(BPA)やフタル酸エステル類などの化学物質が食品容器から溶出し、悪影響を及ぼした可能性があると考察している。

一体どういうことなのか、化学物質に詳しい環境脳神経科学情報センターの木村―黒田純子副代表に聞いた。

――プラスチック容器を電子レンジにかけると、有害な物質が溶出するのでしょうか。

「プラスチック製食品容器から溶出するBPAなど環境ホルモンが、死産を招いているという証拠はそろっていません。問題は、プラ製容器に何が使われているのか、表示義務がなく、電子レンジ加熱で溶出する可能性のある化学物質を特定できないことです」

環境ホルモン作用が懸念される物質が食品容器に

――プラスチック製の食品容器にはどんなものが含まれていますか。

「プラスチック製の食品容器は、ポリプロピレンやポリスチレン、ポリエチレンなどがあります。これらは石油を原料とした合成(有機)高分子化合物で、さらに添加剤が使われることがあります。添加剤は、酸化防止剤や紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤など多岐にわたり、環境ホルモン作用が懸念されているものもあります。さらに、発泡プラスチックであれば、化学発泡剤も使用されている可能性があります」

「この論文では、市販弁当や冷凍食品の摂取頻度が多いケースで死産のリスクが高い理由(収入状態など)を考慮して解析しているとしていますが、詳しい解析情報の記載がないのです。従って、死産のリスク上昇の原因は、現段階では特定できませんが、プラスチックに含まれるビスフェノール類、フタル酸エステル類、それ以外の多種類の添加剤などの複合影響が関わっている可能性を危惧しています」

――ビスフェノールAやフタル酸エステル類が、食品容器に使われているのでしょうか。

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環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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