日本企業、台湾で漁電共生型太陽光発電事業へ

記事のポイント
①イーレックスら5社が台湾で漁電共生型太陽光発電事業に参画した
②台湾では養殖池の上に太陽光パネルを設置し4GWの導入目指す
③日本では陸上養殖少なく、コストの高さや事業性がネックに

イーレックスら5社は、このほど出資する台湾企業が漁電共生型太陽光発電事業の事業計画地で特区認定を得たと発表した。漁電共生型太陽光発電は養殖池の上に太陽光パネルを設置するものだ。台湾政府が推進していて、2025年までに4GWの導入を目指す。日本国内でもウナギの養殖池に太陽光パネルを設置している事例がある。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

漁電共生型太陽光発電所(イメージ)

■2024年中に事業開始へ、発電容量は約55MW

イーレックス以外の出資企業は、JA三井リース(東京・中央)、中央日本土地建物(東京・千代田)、および九電工、マニエスグループ(東京・千代田)のそれぞれの台湾現地法人。

台湾では2030年までに30GWの太陽光発電の導入目標を掲げる。そのなかで養殖池の上に太陽光パネルを設置し、漁業と発電事業の共生を図る『漁電共生型』を新たな手法として着目する。2025年までにこの手法で4GWの導入を目指す。

今回出資した台湾企業は現地企業と共同で開発を行う。2024年度中の開始を計画し、発電容量は約55MWだ。発電された電力は、台湾国内の固定買取価格制度の承認を受けて、台湾の公営電力会社の台湾電力向けに売電する。

イーレックスの担当者は「『漁電共生』は政府主導による先行区が指定されるなど重点政策のひとつ」という。「発電事業が漁業に与える影響の検証が早く進み、ルールが整備されたことを背景にして導入が進んでいます」と指摘する。

ただ日本では陸地での養殖場が少なく、対象用地が限られていることから漁電共生型太陽光発電事業の展開の可能性は低そうだ。

■陸上養殖、コストが課題に

なぜ日本での陸上養殖は少ないのか。初期コストの高さや事業性がネックとなっている。

国立研究開発法人の水産研究・教育機構(横浜市)の荒井大介広報課長は「陸上養殖の設備費に関してはまだ高いのが現状です」と指摘する。ただ「一部では設備コストを下げての生産ができるようになってきて、陸上養殖が展開可能な兆しも見える」とも話す。

事業性についても課題で「参入しても見込んでいたような利益が得られずに撤退する事例もある」とする。今後について「ビジネスとして成り立つかどうかがポイントだ」とした。 コストや事業性といった課題が解決されれば、国内での「漁電共生型太陽光発電」も可能になるかもしれない。

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #SDGs#太陽光発電#漁業

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