復興まちづくりのデザイン案が続々

矢作昌生建築設計事務所の「積み木の家」イメージ

「早く自分の家に住みたい」という被災者の要望に応える住まいのアイデアが、建築家から続々と提案されている。応急措置から中長期までを視野にいれて描かれる生活像は、復興まちづくりにとって、大きなヒントになりそうだ。

■待たれる生活復興

4 月11日現在、岩手・宮城・福島・栃木・千葉・長野の6県で62,290戸の住宅が必要と国交省は発表した。しかし、着工数はまだ約 7,454戸。

仮設費用や資材を節約し、公営住宅等の空室を活用しようという案もある。全国の空室数は27,000戸だが、入居決定は4,200戸と伸び悩む。東北地方にある住戸が1,730戸と少なく、遠隔地への移住がハードルを高くしているようだ。

一方、宮城県は、南三陸町など津波災害地には仮設をしない方針を表明し、町全体が新天地へ移動する可能生も高まる。いずれにしても、迅速な生活復興支援が必要だ。

■住民の手で育くむ家やまちを

阪神大震災では、仮設住宅に移り住むことでコミュニティが断絶され、高齢者の孤独死が増えたという。物理的な復興だけではなく、人が繋がりながらどのようにまちを復興させるか。そのプロセスをデザインすることも重要だ。

横浜国立大学大学院建築都市スクール(Y-GSA)の山本理顕スタジオは、「地域社会圏」型の仮設街区を提案する。「一住宅=一家族」ではなく、お風呂や庭を共有にし、各住戸を開放的にすることで生まれる自治組織を促すシステムだ。ガラス張りの玄関が向き合うまちは、昭和の商店街をイメージさせる。廃熱を利用するコジェネレーション・システムを用いることで、エネルギー効率も高い地域圏構想となっている。

福岡、横浜、釜山を拠点とする矢作昌生建築設計事務所は、間伐材をブロックにして積み上げる「積み木の家」を仮設住宅として提案する。約600万円で、標準的な仮設住宅を建設することができ、将来は居住者に払い下げができることを念頭に置く。住まい手が、積み木を足すことで面積を拡張できるシステムだ。

建物の基礎部分のみを仮設にし、将来的に建物を本設地へ移動できる案もある。NPO法人 N・C・Sを主宰する山下保博氏は、阪神大震災のとき仮設住宅に住む人から「自分の家が欲しい」という要望を聞いたという。以降、迅速に廉価でデザインされた住宅の供給を考えてきた。30年間使える住宅(約20坪)を600万円前後で、着工から3週間で建設することを目指す。移設先の、街並みに合わせられるよう、外観の衣替えもできるそうだ。

多くのデザイン案が被災者に届き、東北の豊かな街づくりに繋がることを願う。

(オルタナ編集部=有岡三恵)2011年4月15日

Y-GSA山本スタジオの「地域社会圏」型配置の仮設住宅イメージ
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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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