「原発がないと停電する」はウソ

フィンランドの地下深くに建設中の放射性廃棄物の埋蔵施設「オンカロ」を初めてカメラが追ったドキュメンタリー映画「100000年後の安全」の上映に合わせ、チェルノブイリと福島原発の両方を取材したジャーナリストの広河隆一氏が28日夜、東京渋谷で緊急トークを行った。

この映画は、原発から出た放射性廃棄物を危険性がなくなるとされる10万年の間、果たして安全に保管できるのかを問いかける内容。監督のマイケル・マドセンが「オンカロ」計画を決めた人々に投げかける鋭い質問に対して、誰一人として明確な答えが返せず、我々は非常に危険な贈り物を子孫に残していることが浮き彫りになる。

日本では今秋の上映予定だったが、福島原発の事故を受けて配給元のアップリンクでは繰り上げ上映を決定、連日多くの人が映画館に押し寄せている。

緊急トークでは、チェルノブイリ周辺400カ所以上の町を取材で歩いてきた広河氏が、事故後にこれらの町で何が起きたかを報告した。

広河氏によると、放射線を撒き散らしたチェルノブイリ原発から30キロ圏内に立ち入るためには事故から25年が経った現在でも許可が必要で、なおかつ18歳未満はそれすらできない。原子炉は事故後、石棺で固められたが、すでにコンクリートがボロボロになっているという。

チェルノブイリの汚染レベルは、少なく見積もっても広島に落とされた原子爆弾の500個分といわれる。その十分の一といわれる福島では、原爆50個分の放射線がでている計算になる。にも関わらず、日本政府は危機意識が低いと指摘する。

その一端が積算被爆の許容量だ。チェルノブイリでは、年間5ミリシーベルトを超える被爆をする地域には人が住めない。原発から4キロ離れ、毎時3マイクロシーベルトを計測したプリピャチはいまだにゴーストタウンと化している。

だが、福島では毎時3.4マイクロシーベルトの地域にある学校でいまでも授業が行われ、政府が年間20ミリシーベルトまで被爆許容量を上げたため、放射線を吸収しやすい子供や妊婦が健康被害の危険にさらされているという。

広河氏は「日本では54基中、22基の原発がいまだ動いている。2003年に東京電力がすべての原発を停止したときも停電はなかった。浜岡原発など東海地震が起きたら非常に危ない。いますぐ、原発をとめるべきだ」と訴える。

アップリンクでは、100000年後の安全の上映と同時に次の予定でトークセッションを行う。29日-世界の原発事情-フィンランド編(須永昌博氏)、30日-廃炉という選択(舘野淳氏)、5月2日-原発に変わるエネルギー(飯田哲也氏)。(オルタナ=形山昌由)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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