トルコ国内初の原発建設推進に変更なし

ブルドゥルの町ではソーラーパネルが普及している

トルコ南西部の山間の町ブルドゥルでは、ほとんどの家の屋根にソーラーパネルが載っている。ブルドゥルは、毎年5〜6月に香水や化粧品の原料となるダマスクローズの収穫で賑わう小さな町。自家ソーラー発電はお湯を温める程度というものの、晴天が続くブルドゥルのような山岳地方、地中海沿岸で普及している。
その背景には電気料金が割高という事情がある。

トルコは国内初となる原発を2基、2019年に稼働させる方針だ。1基目はロシアに発注済で、2基目は日本との間で2011年3月末の合意を目指していたが、東日本大震災の影響で交渉は休止されている。前者は地中海沿岸のアックユに、後者は黒海沿岸のシノップに建設される予定だ。

原発建設計画については、大震災直後の3月14日にウルドゥズ・エネルギー相が継続の方針を示した。また、4月に着任したビルギチ・駐日トルコ大使は5月27日に日本記者クラブで記者会見し、「他国からの交渉開始要請には応じない。被災した日本が交渉を再開できるまで待つ」と明言した。

トルコのエネルギー天然資源省が発表した統計によると、2006年のエネルギー構成比は以下の通り。天然ガスや石炭を中心とした火力が74.82%、水力が25.11%、風力が0.07%となっている。

トルコでは、6月12日に国会議員選挙が行われるが、原発建設の是非は選挙戦の争点とはなっていない。経済成長が著しいトルコでは電力需要は伸びる一方なのだ。また、資源の少ないトルコでは主力の火力発電はコスト高という現状がある。2009年の統計で天然ガスの約98%、原油の約91%、全体では約72%にあたる発電資源を輸入に頼っているためだ。

2008年に改定されたトルコの電気は約7.8〜10.5円/kwh。先進国の中で比較的低料金のアメリカやフランスに近いが、物価と比較すると割高だ。ソーラーパネルは、出力が85Wpのもので3万円程度から手に入る。

大震災後に原発建設予定地のアックユでは建設反対のデモも行われたが、大多数の国民は安価な電力を得られる原発建設を支持している。(たかせ藍沙)

参考リンク
トルコ・エネルギー天然資源省ホームページ(トルコ語、英語)
http://www.enerji.gov.tr

日本記者クラブ・ビルギチ駐日大使記者会見
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2011/05/r00022704/

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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