記事のポイント
- 東京都は11月1日にパートナーシップ制度を開始、都内自治体と連携も
- 都の動きは企業のLGBTQ施策の「推進力」にもなりそうだ
- KDDIは同性パートナーの子を「家族」とみなし、各種手当を支給する
東京都は11月1日に「東京都パートナーシップ宣誓制度」の運用を開始した。パートナーシップ関係にある人たちが宣誓・届出を行い、受理証明書を交付する。都営住宅の入居など行政サービスにアクセスしやすくなる。加えて、都内の自治体と連携して、東京都・自治体のいずれの証明書を提示するとサービスを受けることができるようになる。東京都の動きは企業の取り組みの「推進力」にもなりそうだ。(オルタナ編集部)
■都道府県のパートナーシップ制度、10例目に
今回のパートナーシップ制度は今年6月に制度の根拠となる条例の改正案が成立し、スタートとなった。都道府県の導入としては10例目となった。
パートナーシップを宣誓し、届け出を行うと東京都から受理証明書を交付される。住宅や医療、福祉などの行政サービスにアクセスできるようになる。全国で初めて届け出から受理証明書の発行までオンラインで完結できるようにした。
パートナーシップ制度を導入する16の都内自治体とも連携する。すでに自治体で証明書を交付されていれば、それを提示することで東京都の行政サービスを受けることができる。
東京都の取り組みのインパクトは大きい。LGBTQ特化の就職サイト運営や企業向けにD&Iの研修などを行うJobRainbow(東京・渋谷)の星賢人社長は「対象には都内在勤・在学の人も含まれている。パートナーシップ制度を利用できる人が大幅に増えた」と指摘する。
また手続きがオンラインで完結することも「手続きのわずらわしさや、申請時に性的指向を意図せず知られることがない」と評価する。
自治体のパートナーシップ制度は企業の動向にも影響を及ぼす。企業のなかには同性パートナーシップを承認する際に自治体発行の証明書の提出を求める場合もある。「そういった企業では、自治体での取り組みの広がりがD&Iの推進につながるのでは」と期待を示した。
■KDDI、同性パートナーの子も「家族」に
自治体での取り組みが進むなか、企業は一歩踏み込んだ施策を打つ。
KDDIは2020年6月から同性パートナーの子どもを「家族」として扱う制度「ファミリーシップ申請」を導入している。同社の社員に親権がなくても、会社が指定する手続きを踏まえた同性パートナーとの子どもであれば祝い金などを支給する。社員の声に応える形でこの制度をつくったという。
同社はLGBTQ対応にいち早く取り組んできた。2013年には、契約社員を含むトランスジェンダーの社員を対象に、本人が希望する性の選択、ワーキングネームの使用、健康診断の個別実施、ユニバーサルトイレの利用を推奨した。
2016年には就職時のエントリーシートで性別の記載を廃止した。さらに、2017年4月には、社内規定で定めた配偶者の定義を改訂した。同性パートナーも配偶者に含めて、すべての社内制度の適用を可能にした。
こうした施策は採用活動において効果を発揮している。同社人財開発部新卒採用グループ小林真理奈・採用広報チームリーダーは、「ダイバーシティに注力していることでKDDIを就職先の一つに選んでくださることがある」と手応えを話す。