日本企業で唯一の「CSR報告会」

花束と一緒に日頃の感謝を告げる石井社長(18日、石井造園のCSR報告会で)

株主総会が次々に開催され、企業の社会責任(CSR)について説明する機会の増える6月。横浜市にある小さな造園会社のガレージでも、18日夜、CSR報告会が開催された。当日はCSR活動報告のほか、ミュージシャンを呼んでのライブも行われ、子どもを連れた社員の家族、取引先、栄区長や地域の自治会長らで賑わった。

「CSR活動をやると、社員の意識が高まり、やる気につながり、社内が活性化する」

石井造園の石井直樹社長は、CSR報告会の冒頭でこう語った。10人ほどの小さな会社だが、社員からインターンまで、一人ひとりが自社のCSR活動についての発表を行った。当日は生憎の雨だったが、100人を超えるゲストで賑わい、会場のガレージは温かい雰囲気に包まれていた。

同社は、顧客や社会から信頼される企業を目指して、「地域志向CSR方針」を打ち出している。緑を取り扱う会社として、横浜市の「150万本植樹活動」に賛同し、1500本の苗木を無料で配布した。ウェブサイトでは毎月、CO2排出量を掲載するなど情報公開にも取り組む。日本財団(東京・港)が主催する「市民が選ぶCSRプラス大賞」にもノミネートされ、1200票を獲得した。

トップが明確なビジョンを掲げることで、社員の意識は一段と高まるようだ。

3月11日の東日本大震災発生当日、同社のある横浜市栄区は停電で真っ暗だった。だが、石井造園の明かりだけは消えることがなかったという。自社の発電機を稼動し、工事用の黒板には、「充電できます。トイレ貸します。水道使えます」と書き、環状4号線の渋滞車両にアナウンスをした。

すると、携帯を充電したいという人や水が欲しいという人たちが集まってきた。渋滞につかまり、子どもを迎えに行けない母親には駐車スペースを提供し、母親は走って子どもを迎えに行くことができた。

石井社長は、「私が帰る前の出来事で、指示もマニュアルもないなか、地域で一灯を灯すことができた社員を誇り思う」と述べる。

報告会の後には、「湘南から元気を届けたい」という思いで活動するフォークシンガーのテミヤンさんのライブも開催された。子どもから大人まで歌に合わせた振り付けで踊り、一緒に歌を歌う。当日は、同社の経理を担当する石井社長の妻・美奈子さんの誕生日だったこともあり、歌の合間に、石井社長から日頃の感謝の思いも告げられた。

同社は、6回目となる「平成22年度横浜市優良工事請負業者」を受賞するなど造園技術も高い。社員の自信に満ち溢れた生き生きとした表情が印象的だった。(オルタナ編集部=吉田広子)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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