東電株主、長年の脱原発運動に手応え

会場近くの公園で開かれた「脱原発・東電株主運動」の報告会

震災後初の東京電力株主総会が6月28日に開かれた。過去最多の9000人超の株主が参加し、主会場に入りきれない株主は4つの別部屋や廊下にあふれた。多くの株主がモニターを見守るだけで質問できない状況に置かれたまま、総会は約6時間に及んだ。

「相変わらず口先だけの謝罪」「テレビで見た通りの形式的な受け答え」「政策や震災のせいにして無責任」など、東電の対応への不満を口にして途中退席した人も少なくなかった。

今回は402人の株主が、原発からの撤廃、原発を古い順に停止し廃炉にすること、新設や増設は行わないことを、同社の定款に明記するよう提案した。しかし、議決権ベースで賛成は約8%のみ。反対が約89%、棄権や無効などが約3%という結果になり、3分の2以上の賛成が得られず否決された。

「株主提案に賛同して挙手した人は、議長に見えない別会場にもたくさんいた。しかし入場時に議決権行使書は提出済みで、挙手は形式だけ。まともに数えることもせずに、いつものように否決した」と話すのは、株主提案をまとめた市民団体「脱原発・東電株主運動」の石川もとさんだ。

東電側は、定款に適した内容でないとして、株主提案への反対を事前に表明していた。同団体は弁護士に相談し「法的に妥当な要求」と確認済みだったが、それを発言する機会はなかった。議長を務めた勝俣恒久会長が檀上から「取締役会は反対」と念を押した後、形式的な挙手を経て採決に至った。

否決を決定付けたのは、議決権の過半数を握る法人株主による反対票だとみられる。議長は株主の質問に答え、大株主からの委任状が結果を左右することを明かした。なお3月末現在、同社の大株主トップ10には信託銀行や銀行、生命保険会社などの名前が並ぶ。5位に東京都もランクインしている。

総会後に同団体は報告会と記者会見を開催。質問した内容や東電の返答について、石川さんらが順番に報告した。各会員は、株主提案否決を「想定済み」と冷静に受け止める一方で、一般の株主からの予想以上の賛同に感謝を述べ、長年見てきた総会の雰囲気が震災を機に一変したと驚いていた。

同団体は、1989年に福島第二原発の再循環ポンプ破損事故を機に活動を開始。年に1度の総会のたびに原発の危険性を指摘してきた。2009年には、老朽化した福島第一原発1~3号機の廃炉を提案したが否決されている。ついに起きてしまった大事故に、記者会見では無念さのあまり涙をにじませる会員もいた。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年6月29日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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