暑さをしのぐ緑のカーテンで被災地支援も

パソナの緑に囲まれたオフィス

植物で窓や外壁を覆って日光を遮る「グリーンカーテン」が人気だ。節電が迫られて冷房使用の自粛が求められている今夏を乗り切るために、家を涼しくする手段として注目を集めた。ゴーヤやキュウリを育てて食べる楽しみに加えて、東日本大震災の被災地支援にも役立つなど、さまざまな効果も魅力だ。

中島あいさんとお母さん

「花が好き。育つといいね」。神戸市の小学生、中島あいさん(8歳)は、母親に話しかけ顔をほころばせた。東京・大手町にあるパソナグループ本社で7月に行われた「グリーンカーテン体験イベント」では、30人ほどの家族連れが育て方や効果を学び、苗をもらった。パソナは10年3月にこのビルに移転した際にグリーンカーテンを取り入れた。

グリーンカーテンで覆った外壁は、何もしないところに比べて夏場の温度が10度以上低いという。冷房の使用量を減らすことに加え、緑を育てたり眺めたりすることで社員の心の癒しにつながった。苗会社ベルグアース(愛媛県宇和島市)によれば、つるをつけて壁面を覆うことのできるゴーヤなどの苗の販売が急増。去年は数千苗だったのに対して、今年は10万苗以上になる見込みだ。

パソナの緑に囲まれたオフィス

グリーンカーテンを被災地支援に使う動きもある。NPO「緑のカーテン応援団」(東京・板橋)は、被災地の仮設住宅3万戸に3年間かけて、このようなカーテンを提供するプロジェクトを始めている。仮設住宅は断熱を考えない簡単な構造で、夏場は暑くなる。それを防ぐ取り組みだ。

暑さをしのぐ以外の効果もあった。同会の小堺秀治さんには印象に残る体験がある。仙台市の仮設住宅で園芸が趣味の主婦と出会った。庭でたくさんの花を育てることが生きがいだったのに、津波で家は全壊した。苗を提供するとその女性は「うれしい」と涙ぐみ、「責任を持って育てる」と話した。小堺さんは「緑は人の心を和ませます」と活動の意義を再確認している。

チームネット代表の甲斐徹郎さん

植物で日差しを遮るという昔からの知恵を、現在の家作りに応用して広げたのは、チームネット代表の甲斐徹郎さんだ。10年ほど前から環境共生型の家、マンション、街づくりを提案してさまざまな賞を受け、「グリーンカーテン」という言葉も作った。夏に快適な家をつくるコツは「昼の熱を入れず、夜の涼しさを取り入れる」ことだという。

植物は熱を遮り、工夫次第で空気の流れを変え、体感温度を下げる。「ブームをきっかけに快適なエコが広がって、省エネの定着した社会になってほしい」と甲斐さんは期待する。(オルタナ編集部=石井孝明)7月27日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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