ダブルチェックとは名ばかりの安全委

11日の原子力安全委員会臨時会議での斑目春樹委員長(ニコニコ動画から引用)

北海道の高橋はるみ知事は17日、定期検査中の北海道電力泊原発3号機の運転再開に同意した。その理由の一つとして知事は、経産省原子力安全・保安院に加えて内閣府原子力安全委員会も定期検査の妥当性を確認したとする「ダブルチェック」を挙げた。しかし実際には安全委員会は保安院が実施した定期検査の内容を単になぞっているだけに過ぎず、ダブルチェックとは到底呼べるものではない。

■斑目委員長「判断は保安院が」

「定期検査というものは、あくまでも規制行政庁である原子力安全・保安院というところが、責任を持ってしっかりと、プラントの状況を確認し、合否を判断するものだというふうに、理解してございます。従いまして、定められた検査項目、それぞれについて、しっかり現場確認等を行うことなんかによって、その上で、適切な判断を原子力安全・保安院がしていただきたい」

これは、11日に開かれた安全委員会の臨時会議での、泊原発の定期検査に関する斑目春樹委員長の発言だ。安全委員会として保安院の検査内容を追認するという内容を、臆面もなく吐露している。

このあまりにも無責任な内容に、傍聴席からは「全然ダブルチェックじゃない」「税金泥棒だ」などの怒号が相次ぎ、会議が途中で打ち切られる異例の事態となった。

■今に始まったことではない

「安全委員会は保安院が行った安全検査を後からなぞっているだけ。今に始まったことではない」。こう話すのは、NPO原子力資料情報室の伴英幸共同代表だ。

「保安院の安全検査が本当に妥当なのかという視点で安全確認を行うよう、ずっと問題提起してきたが、なぜかやろうとしない。今回に限らずこれまでも安全委員会はずっと同様の姿勢を取り続けてきた」(伴氏)

東京電力福島第一原発事故は、かねて指摘されてきた津波による電源喪失の危険性を保安院や安全委員会が無視した末に発生した。同様の事態が繰り返されうる構造的な問題は、「フクシマ後」の今もそのまま温存されている。

伴共同代表は「泊原発付近には大きな断層がある。今やるべきは、2006年に改訂された原発の耐震設計審査指針に基づいた耐震バックチェックの実施だ」と指摘する。「ダブルチェック」の名の下に大きな災厄が準備されるようなことは、絶対にあってはならない。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年8月18日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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