記事のポイント
- 国際人権NGOが「人権年鑑2023(ワールド・レポート)」を公表
- 同レポートは100カ国近くの2022年の人権状況をまとめている
- 日本に対しては、LGBTQ差別禁止法の不在や難民認定率の低さを指摘した
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(本部:米ニューヨーク市)は1月12日、活動対象としている100カ国近くの2022年の人権状況をまとめた「人権年鑑2023(ワールド・レポート)」を公表した。日本に対しては、国内人権機関の不在やLGBTQに対する差別を禁止する法律がないこと、難民認定率の低さなどを指摘した。(オルタナ副編集長=吉田広子)
「人権年鑑2023」は、各国の人権状況をまとめた報告書だ。
同報告書が不在を指摘した「国内人権機関」とは、裁判所とは別の機関として、人権侵害からの救済と人権保障を推進するための国家機関を指す。国連機関である自由権規約委員会は1998年から、日本に対し、政府から独立した国内人権機構を設立するように勧告しているが、いまだ実現されていない。
LGBTQに関しては、国会でLGBTQ差別禁止法が可決されなかったことや、法的性別変更に不妊手術を必須としている点を指摘している。
日本の難民の受け入れ状況についても問題視している。2022年は、難民認定の申請者数は2413人で、難民として認定されたのは74人だけだった。
人道上の配慮から在留を認められた外国人580人のうち498人はミャンマー国籍だが、難民認定は受けられなかった。2021年2月に軍事クーデターが発生し、人道危機に陥ったミャンマーだが、国軍と武装勢力の戦闘が止まず、不安定な情勢が続いている。
一方で、報告書では、 ウクライナから「避難者」として2035 人(2022年10 月時点)を受け入れている点についても言及している。
ビジネスと人権を巡り、経産省は2022年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を発表した。
しかし、「拘束力のないガイドラインは大幅に強化されるべきであり、拘束力のある法律に取って代わるものではない」として、「日本は、企業が自社の事業とグローバルバリューチェーンにおいて人権と環境基準をどのように尊重するかを規制する強力な法律を採用する必要がある」と断じる。
このほか、「人権年鑑2023」では、長期間身体を拘束して自白を迫る「人質司法」や、オンライン教材を使用する子どもの個人情報管理の問題点などについて、報告している。