遅れて出る病気、放射線医学の専門家が語る

事故から半年経ち関心が薄れたのか、1106席のホールに参加は28人

船橋の市民団体「原発と被災地支援を考える会」(代表:朝倉幹晴)が、10日に元放射線医学総合研究所主任研究員の崎山比早子氏を招いて「放射性物質・放射線の人体影響」をテーマに船橋市民文化ホールで講演会を開催した。

崎山氏は、故高木仁三郎が市民科学者を育てるために創設した「高木学校」に所属する医学博士だ。震災後、専門家として各地に呼ばれ、放射線が人体の設計図である遺伝子を傷つけて病を引き起こすメカニズムを解説している。

損傷した遺伝子は修復されるが、問題は、その際に起こる間違いだ。いったん遺伝子に起きた変異は細胞分裂のたびに複製される。崎山氏は「放射線の影響は蓄積し、減ることがない。常に足し算されるので、浴びて良い安全安心な量など無い」と断言する。

「チェルノブイリ事故の汚染地域では子供の甲状腺、副腎、すい臓など重要な内分泌器官にセシウムが蓄積した。甲状腺がんの発生数が事故の5年後から急増し、年々増加している」。最新のチェルノブイリ被害実態レポート(ニューヨーク科学アカデミー、2009年)は、現在翻訳中だという。

崎山氏は会場からの質問に答えて「これ以上の影響を防ぐために、食べ物を選び内部被曝を避けること」と「次の事故を防ぐために、原発の存在自体を問い直すこと」の必要性を訴えた。

同会は震災後から、福島第一原発の事故を約20年前に警告していた映画「あしたが消える~どうして原発~」の上映会などを開催してきた。今後も連続講演会として月1回ゲストを船橋に招く。

10月は、元東電社員・福島第一原発監理者で拉致被害者家族の蓮池透氏による「福島第一原発事故から見えてくるもの」、11月は、写真家でジャーナリストの樋口健二氏による「闇に消される原発被曝労働者」、12月は、東大文学部宗教学の島薗進教授による「生命倫理、そして原発事故後の首都圏放射性物質対策へ ~東大柏キャンパス放射線量データの発表方法をめぐる総長折衝を踏まえて~」の講演会を予定している。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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