「画期的」自転車の車道通行促進へ

警察庁は25日、自転車の車道通行の促進を図ることなどを掲げた「自転車交通総合対策」を発表した。自転車の歩道通行やブレーキなし自転車の横行などにより事故が多発している現状に対して、ついに警察庁が抜本的対策に踏み切った形だ。

■自転車通行環境に改善のメス

今回の対策で特筆すべきは、自転車の車道通行の徹底に向けて、悪質な違反者には交通切符で摘発するなどの取り締まりを強化するとともに、自転車の走行環境の改善についても踏み込んでいる点だ。

「サイクルモード2010」会場での、スポーツサイクル初心者を対象とした講習会の様子。震災後、自転車は災害に強い移動手段としても注目されている

自転車は従来から車道を通行するよう定められているが、指導は徹底されず、しかも車道には十分な通行スペースが確保されていないため、結果として狭い歩道に自転車と歩行者が混在し、事故の多発を招く要因の一つとなっていた。

現在「自転車歩道通行可」の標識が掲げられ、自転車の通行が認められている歩道であっても、今後は幅3メートル未満の歩道については自転車通行を原則禁止し、車道に設けた自転車レーンを走るよう指示する方針だ。ただし小学生以下の子供や高齢者は例外として、従来通り歩道を通行できるようにする。

これまでも警察庁は自転車の車道通行を促してはいたが、現場で取り締まりに当たる警察官自身がいわゆる「白自転車」で平然と歩道を通行していたことに象徴的なように、「掛け声」だけに終始していた面が大きかった。しかし25日以降、フェイスブック上で「生まれて初めて車道を走る白チャリの警察官を目撃」などの書き込みが登場するなど、早くも変化への兆しが出ている。

■自動車運転者も教育対象に

NPO自転車活用推進研究会の小林成基理事長は今回の対策について「画期的なこと」とした上で「今後、対策の実行は自治体や各地の警察本部、商店街など道路管理者に委ねられる」と語り、自転車通行環境の改善には各方面の協力が欠かせないとの考えを示した。

とりわけ小林氏が注目するのが、免許更新時に自動車運転者への教育を実施する点だ。「自転車の車道通行を自動車の利用者へも周知することは、以前では考えられなかった。今回の対策は自転車乗りの視点で作られている」と評価する。

自動車優先の交通行政が変わろうとしているのは疑いない。それだけに「自転車も人の命を預かる車両である」という認識の共有が急がれている。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年10月27日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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