――すでに成果を上げているものは

研究期間が3~5年にわたるため、最終的な成果を得るまで時間がかかるが、部分的に成果が出始めている。例えばブータンヒマラヤの氷河湖決壊洪水に関する研究では、現地調査や精密な解析などの結果、当初指摘されているよりも決壊のリスクは小さいということが判明した。今後は氷河湖の水をどう利用するのかについても関心が向けられるだろう。
――環境難民リスクへの関心を高めるにはどうすれば

日本で暮らしていると見えにくい面があるが、私たちが利用する様々な製品は海外で作られているものも多く、私たちは日本にいながら世界と深く結びついている。これからは、日常生活を環境難民リスクが大きく左右する可能性があるという認識が一般的になるだろう。
一方、科学的で専門性が高い情報は広まりにくい面もある。SATREPSでは若い文系学生をインターンに受け入れ、科学の知識を分かりやすく伝える「科学コミュニケーション」を促す試みを続けている。またSATREPSの活動を活性化させる双方向の取り組みとしてSNS「Friends of SATREPS」を開設し、学生や研究者、社会人など2000人超が既に参加している。