「収入は10分の1。それでも『命』を守りたかった」――山本太郎氏(俳優)インタビュー

■国民の「無関心」が今の社会を作った

――国民が何を求めていて、それに応える政治家に投票するというのは、ものすごく基本的なことで、選挙に行かなければ民意は反映されません。

山本:やはり、自分も含めた世間の無関心がこういう社会をつくってしまった最大の原因です。ほとんどの政治家はどっちが得か、を見ているだけです。

今、不条理を押し付けられている人びとに対して、手を差し伸べている人達は圧倒的に少数派です。無視されている状況です。同じように長期的なビジョンを持っている政治家も圧倒的に少数です。本当は長期的な視野を持ってこの国の舵取りをする人たちがいれば、いいけれど、実際はそうじゃない。

だから、政治家は風見鶏でも良いと思っています。でも、僕を含めた世間の無関心が社会を覆ってきたから、風見鶏が風の読み方を忘れてしまったのです。

だから、彼らに風の読み方を思い出させる必要があります。「風を読め、でないと落とすぞ」というメッセージをはっきり伝える。「次、落とす」ということをハッキリ伝える。一番、政治家が恐れていることをハッキリ伝えるのです。

――投票という国民の権利を行使していこうと広く訴えながら、政治家にも問いかけていくのですね。

山本:問いかけるだけではありません。ハッキリさせます。喉元に突きつけます。こんな社会にしたのは僕も含めた大人の無関心です。ただ、それ以上の責任が政治家にはあります。

だから、政治家一人ひとりの喉元に突きつけるのです。そうしないと手遅れになってしまう。中には「長い戦いになる」という方もいます。でも、僕はそうは思わない。一刻を争っています。すぐに答えを出させます。

――「反太郎勢力」を名乗る人びとにも直接会う理由は何ですか。
山本:彼らの真意を知りたいのです。

――なぜネガティブな発言を向けられると思われますか。

山本:結局、話しかけてきたのは一人だけでした。「お前、この2カ月見てきたけど、随分、楽しませてもらったよ」と。「その会場に来ても、趣旨とあわない」。僕がそこに行く意味がない。これから生きていくことを真剣に考えているひとたちが集う会場に、そういう人が押しかけても困る。趣旨が違う。

どういう意図で、ネガティブなツイートするのか分からない。会場にぶっとばしにくるのか、刺しにくるのか分からない。でも、話あってアジャストできるものならしたいと思ったのです。

トップギアでネガティブなエネルギーを僕に向けている人たちは、誤解がとければ、一緒になって戦える仲間だと思っています。同調して欲しい訳じゃありません。ただ、誤解を解いて、お互いニュートラルな気持ちで、生き延びるための戦いをしたいのです。あり余ったその怒りの力を貸して欲しい。それくらい事態は急を要しています。

■「脱原発」を世界に示すことが日本の役割

――ドイツやベルギーでは脱原発が進む一方、アジアではエネルギー大国の中国や巨大な原発産業を持つ韓国があります。日本以外の国の動きについてどう思われますか。海外の市民運動と連帯するお考えはありますか。

山本:原発は世界中の問題です。ですが、まずは自分の国を何とかしないと他の国に意見をすることはできません。このままでは、悪い例として残るだけです。今やるべきことは、「あれだけの事故を経験し、脱原発社会を実現しました」という姿を世界に示すことです。原発は不安定であるということを世界中に発信することです。

自然エネルギー社会までは火力発電でつないで、その間に、十分な研究をして、自然エネルギーでこれだけのものを生み出せるのだ、それによりこれだけの雇用創出もできるんだという姿を世界に発信したいですね。

転んで、そのままじゃダメですよね。転んだら、なんとしても起き上がろうとする姿勢が必要です。でも、今の日本は転んだままです。白骨死体化しつつあります。

原発の事故は、確かに最悪な出来事でした。でも、転んだ先にダイヤモンドが見えています。手を伸ばしてこれを掴むべきです。最悪な事態だったけれども、同時に良い方向に転換する機会を得たのです。そのための材料はころがっています。

――今後はどのような活動を予定されていますか。

山本:11月24日から12月25日までドイツ、ベラルーシ、チェルブイリを訪れます。一つは現地の市民運動のあり方を視察することです。日本ではデモ隊が3列から4列になっただけで、デモ参加者が逮捕されるのが現状です。不当逮捕です。

ドイツでは核燃料を鉄道で運ぶそうです。その鉄道が自分たちの町を通ることに抗議した住民たちが鉄道の侵入をおくらせる。抗議しても、逮捕されるようなことはないそうです。ドイツでは何かに抗議することは権利だそうです。だから逮捕にも相当しない。その成熟した社会での市民運動のあり方を見てこようと思います。

■子どもの人権擁護団体はなぜ原発に無関心なのか

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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