米アニメ映画で、ハンセン病差別表現が問題に

「誤解を招く表現」と指摘されている問題の場面。船員の左腕が落ちている (「The Pirates! Band of Misfits」の予告編から)

米国を始め世界各国で今春上映予定のアニメ映画「The Pirates! Band of Misfits」の予告編で、ハンセン病患者・回復者に対する差別表現があるとして問題視されている。

世界保健機関(WHO)のハンセン病制圧特別大使で、日本財団の笹川陽平会長は1月18日、制作を手がけたアードマン・アニメーションズ(本社・英国)とソニー・ピクチャーズ・アニメーション(同・米国)に対し、該当箇所の修正・削除を求めた。

問題になっているのは、メインキャラクターの海賊が船に乗り込み、乗組員に対して金を要求すると、「金なんてない。この船は『らい病患者(LEPER)』の船だから」と答え、「ほらね」の一言とともに乗組員の左腕が落ちるシーンだ。

ハンセン病患者を意味する「LEPER」は、国連総会本会議で「差別用語」にあたるとして排除勧告されている。抗議文書では、「ハンセン病に罹患しても腕がとれるような症状はなく、ハンセン病に対する誤解と偏見・差別を助長する」として、該当箇所の修正・削除を求めた。

この 30 年間で、世界中の約 1600 万人がハンセン病から治癒した。新規患者数は減少し、現在では年間 25 万人以下になっている。それにもかかわらず、社会的烙印と差別は根深く残っている。この深刻な問題に対し、国連総会は特別な注意を求める決議を2010年 12月に192 カ国の賛同を得て採択した。

予告編は公式サイト上に公開されている。日本財団広報グループの福田英夫さんは、「文書は1月18日に、FAXと郵送で米国の本社に送った。現時点で回答はない」としている。

これに対し、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(東京・港)で広報を担当する平林美枝子さんは「まだ作品が完成しておらず、日本の公開も未定の状態。完成作品を見てから検討したい」と回答した。(オルタナ編集部=赤坂祥彦)

予告編

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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