原子力発電の賛否を問う都民投票の実現に向け、条例の制定を求める「直接請求」に必要な署名を集める活動は6日、締め切りの9日(一部地域を除く)を目前にして、地方自治法が定める有権者数の50分の1を上回る約21万6千筆を確保した。今回は法の手続きにのっとり、「受任者」だけが署名を集めることができる。記者も受任者として署名活動を体験してみた。
■身だしなみには気配り
受任者は選挙権を持ち、選挙人名簿に登録されている人であれば誰でもなれるが、受任者以外の人が集めた署名はすべて無効となる。また、記者は小金井市民なので、同市民以外から署名を集めることはできない。
記者は先週末(4日と5日)の日中、自宅の近所を訪ねて回った。髪をととのえ、鼻毛が出ていないかチェックし、普段は開くシャツの第1ボタンを締めて・・・と、身だしなみには特に気を配る。
「原子力発電のこれからについて、都民が住民投票で判断を示そうという動きがあります。もし共感していただけるのでしたら、署名にご協力ください」と切り出す。戸建て、アパートなど12軒を回って3筆集めた。署名した人の中には「原子力は大丈夫なのか」と不安を口にする人も。持ち家世帯の方が、賃貸世帯よりも関心が高い印象を受けた。
■「ご近所」で原子力を話題に
記者に受任者を勧めてくれたのは、隣町で惣菜店を営む女性(63)だ。「今まで原発を止められなかった。私はこの先短いだろうが、次の世代に原発を残しては死ねない」。これまで脱原発運動に参加してきただけに、今回の原発都民投票にかける思いは特別なものがある。
その一方で女性は、地域で大っぴらに原子力発電を語ることへの抵抗も感じるという。「けれども今回はそんなこと言っていられない」と、寒風吹く駅前で署名集めにも立った。
これまで国民全体の議論を経ずに国策として進められてきた原子力発電だが、今回の住民投票に向けた署名集めは、「ご近所レベル」で原子力と正面から向き合う機会にもなっているようだ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2012年2月7日