記事のポイント
- 法務省は7日、ビジネスと人権に関わるシンポジウムを開催した
- 米ワシントン大学教授は「救済へのアクセス」が問題だと指摘した
- 同教授は「各国・企業には効果的な救済策の提供が求められる」と強調した
アニタ・ラマサストリ・米ワシントン大学法科大学院教授が7月7日、都内のシンポジウムで「国連『ビジネスと人権指導原則』には『忘れられた3本目の柱』がある」と警鐘を鳴らした。「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」に続く「救済へのアクセス」を指し、多くの国や企業にとって最大の課題は効果的な救済策を提供することだと強調した。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

シンポジウムは7月6日~7日、法務省主催の司法外交閣僚フォーラムの特別イベントとして開催した。
司法外交閣僚フォーラムでは「日本ASEAN(東南アジア諸国連合)特別法相会合」「ASEAN・G7法相特別対話」「G7法相会合」が開かれ、「法の支配」推進や「人権を守ることの重要性」を確認した。
ラマサストリ教授は、「日本の持続可能なビジネスに向けた救済策」のテーマで講演した。
同教授は「国連指導原則25では、人権侵害が自国の領域で発生した場合に国は、影響を受ける人々が効果的な救済策へアクセスできる適切な措置を講じなければならないと定めている」と述べた。
「多くの国や企業にとって最大の課題は効果的な救済策を提供することだ」と示し、1.「司法的および非司法的の両方の観点からの救済」、2.「日本国外で被害者が発生している問題の対処法」、3.「救済策へのアクセスを妨げる障壁についてのより詳細な調査」、4.「日本人労働者の権利に焦点が当たりすぎている現実」を指摘した。
国連「ビジネスと人権指導原則」は、1.「政策等を通じて人権を保護する国家の責任」、2.「企業活動から生じる人権課題に適切な対応をとる企業の人権尊重の責任」、3.「国家、企業による人権被害者に対する救済手段の構築の責任」の3本柱から成り立っている。
日本では、2020年10月に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」を策定し、2022年9月には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表した。
法的拘束力はないものの、日本で事業活動を行う全ての企業に対して、サプライチェーンなどにおける人権デュー・ディリジェンスの遂行を含め、人権尊重に係る取り組みに最大限努めることが求めている。