放射能と向き合う「アクアマリンふくしま」で海辺の環境教育フォーラムを開催

福島県産の生物展示も。停電と断水に見舞われた震災後、地元の海水魚の一部は海に返された

国連「ワールド・オーシャン・デイ」の6月8日から、「第11回海辺の環境教育フォーラム」が開催された。会場のアクアマリンふくしま(福島県いわき市)には、海の環境教育に取り組む100人が集結した。

2日目には、「福島の海・放射能汚染の現状」をテーマに、東京海洋大学の石丸隆教授が講演した。

沿岸に汚染水が3カ月ほど流れ続けた福島原発事故では、チェルノブイリよりも海洋生物への影響が長期化している。特に、海底にすむ生物や食物連鎖の上位にいる生物に汚染が残っている。スズキなど一部の魚種では「放射性セシウム濃度が、まだピークに達したとも言い切れない」状況だという。

一方で、それ以外の生物では、徐々に検出値が下がりつつある。質疑応答で安全性について問われると、石丸教授は「基準値は十分に低い。それ以下であれば、毎日食べなければ大丈夫だろう」と答えた。

続いて、アクアマリンふくしまの獣医技師の富原聖一氏が、同館の独自調査について発表した。いわき明星大学、金沢大学、東京海洋大学らの協力を得て、継続的に生態系への影響を調べるという。ホームページや館内に表示された現在の放射線量は、東京と大差ない。

富原氏は、震災直後からブログ「アクアマリンふくしまの復興日記」を公開している。開館11周年にあたる昨年7月15日に営業再開にこぎつけた際には、放射能汚染に関して安全とも危険とも言わず、「事実を事実として展示していきます」とつづった。

同館は、スパリゾートハワイアンズと並ぶ、いわきの観光スポット。「環境水族館」と銘打ち、娯楽目的のショーの代わりに、子どもが自ら魚を釣ってさばいて食べる体験学習などに力を入れている。また、日光が降り注ぐ大型水槽でダイナミックな食物連鎖を再現するなど、展示ポリシーにも特色がある。

津波の影響で飼育生物の9割を失ったが、各地の水族館らの支援を得て、生物数は震災前を上回るほどに復活した。昨年8月には、予定より4カ月遅れで、累計入館者数1000万人を達成している。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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