「プラネタリー・バウンダリー」が示す地球環境の切迫

記事のポイント


  1. 国際的な科学者チームが最新版「プラネタリー・バウンダリー」を発表した
  2. 「新規化学物質」「気候変動」などの9項目から地球の限界値を可視化
  3. 6項目で安全圏を外れており、地球が切迫した状況にあると警告する

国際的な科学者チームはこのほど、地球の限界値を可視化した「プラネタリー・バウンダリー」の最新版を発表した。「気候変動」「新規化学物質」「オゾン層の破壊」など9項目から、人類が地球で生存し安全に活動できる限界値を科学的に表した。9項目のうち、6項目が安全圏から外れており、地球が切迫した状況にあると警告した。(オルタナ編集部・北村佳代子)

最新版「プラネタリー・バウンダリー」
Credit: Azote for Stockholm Resilience Centre, based on analysis in Richardson et al 2023.

「プラネタリー・バウンダリー」は、ストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム博士(現ドイツ・ポツダム気候影響研究所共同所長)らによって開発された概念だ。「地球の限界」と訳す。2009年に初版を発行し、今回、第4版となる最新版を学術誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載した。

■「地球全体に対する初の科学的な健康診断」

今回、「地球の限界」を評価する9つの項目の分析結果が初めて出そろった。科学者らは「地球全体に対する初の科学的な健康診断だ」と解説する。

この研究では、安全圏の超過は、約1万年前の最後の氷河期の終わりから産業革命が始まるまでに存在していた、安全かつ安定した状態から、地球のシステムが大きく外れたことを意味する。

地球の変化に関する項目について、人間が安全に活動できる範囲内にとどまれば人間社会は発展し繁栄できるが、境界を超えれば、人間が依存する自然資源に対して回復不可能な変化が引き起こされるという。

今回の最新版では、9つの項目のうち6項目が、人為的な汚染と自然界の破壊によって安全圏を超過した。

具体的には、「気候変動」「新規化学物質」「生物地球化学的循環」「淡水の利用」「土地の改変」「生物圏の一体性」の6項目が安全圏を超過した。

「大気エアロゾルの負荷(大気汚染)」と「海洋の酸性化」は、安全圏内にとどまってはいるものの限界値に近づきつつあるとの評価だ。

「成層圏オゾンの破壊」も安全圏内にとどまるが、これは脅かされていない。ここ数十年間、オゾン層破壊につながる化学物質を段階的に削減し、オゾンホールが縮小したためだ。

2009年、2015年、2023年の「プラネタリー・バウンダリー」の推移
Credit: Azote for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University. Based on Richardson et al. 2023, Steffen et al. 2015, and Rockström et al. 2009

■「地球は回復力低下の兆候が高まっている」
■地球の状態は「血圧が非常に高い患者」
■「気候変動」や「新規化学物質」など安全圏を大幅に超過
■「絶滅の加速度」も「生態系機能の損失」も悪化へ

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北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #サステナビリティ

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