オルタナは3月25日、「サステナ経営塾」(旧CSR部員塾・旧サステナ部員塾)特別講義&同窓会をセガサミーホールディングス本社で開催した。特別講義では、荒井勝・NPO法人日本サステナブル投資フォーラム会長が登壇し、「ESGはなぜ生まれたのか、どこにいくのか」について講義した。同窓会では、同塾第1期から第20期までの受講生や講師らが参加した。

オルタナは2011年にサステナビリティやCSR(企業の社会責任)を学ぶ「CSR部員塾」を立ち上げた。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として展開している。
サステナ経営塾は、SDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境・社会・ガバナンス)、CSRなどの「サステナビリティ領域」を体系的に学べる通期講座だ。企業の先進事例の共有や受講生同士のグループワークを通して、「サステナブル経営」推進のための知見とノウハウを身につけてもらうのが目的だ。
■特別講義「ESGはなぜ生まれたのか、どこにいくのか」
「サステナ経営塾」特別講義では、荒井勝・NPO法人日本サステナブル投資フォーラム会長が「ESGはなぜ生まれたのか、どこにいくのか」について講義した。
米国では近年、反ESGの圧力が強まっている。しかし、荒井会長は「反ESGの動きは短期的なものにとどまるだろう」との見解を示した。
一部の州では、ESG投資を行う運用会社から資金を引き揚げる動きが見られる。
論文「アメリカにおけるESG投資の拡大と論争」(御代田有希・東京大学大学院特任研究員)によると、2023年1月から6月の間に米国37州で165の反ESG法案および決議が提出された。しかし、財政面での懸念から、反ESG法案に対する支持は限定的だと指摘されている。
加えて、独占禁止法違反による訴訟リスクを懸念し、ESG関連の国際的イニシアティブから脱退する保険会社や金融機関も出始めた。だが、これをもってESGが後退していると考えるのは早計だ。
荒井会長は、「運用会社はトランプ政権からの攻撃を見越し、当面は余計な発言を控える方針を取っている。ただし、方針自体は変えず、表現を調整する形で対応している。例えば、『ESG』の代わりに『サステナブル』、『DEI(多様性・公正性・包摂性)』の代わりに『Opportunity and Inclusion(機会と包摂性)』といった言葉を使っている」と説明する。
トランプ大統領のパリ協定離脱表明に対し、ニューヨーク州やカリフォルニア州などの州政府がパリ協定達成のために「United States Climate Alliance」を発足するなど、連邦政府の決定に反対する動きもある。
一方、日本でもESG投資は広がっている。
サステナブル投資資産の総投資資産に占める割合(2022年)は、日本でも34%に達した。日本サステナブル投資フォーラムのアンケート調査によると、すでに63%がサステナブル投資になり、投資残高は625兆円に上る。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が選定したESG9指数の収益率(2023年4月~2024年3月)を見ると、親指数の収益率が0~6%台であるのに対し、ESG9指数は最大47%台に達するなど、パフォーマンスに明らかな差が見られる。
荒井会長は、「ESGを考慮することで投資パフォーマンスが向上する傾向が見られる。これは、投資家の企業に対する評価基準が変化していることを示している。すでにESG投資は主流になっている」と指摘した。
「そもそも株式の役割とは何か。株式による資金調達の目的は、企業が将来のために長期投資して、企業価値を高めることにある。そう考えると、将来の企業価値判断には、環境・社会課題対応やガバナンス、人材といった非財務情報が不可欠だ」と強調した。
■食堂にダーツや図書スペースも

参加者は講義後、会場となったセガサミーホールディングスの本社を見学した。伊藤則彦・サステナビリティコミュニケーション部長(サステナ経営塾19期生)らが案内した。
参加者はまず9階の社員食堂「JOURNEY’S CANTEEN」に向かった。広々とした食堂は約500席を有し、一日当たり約2000人が食事できる。奥のバースペース「&BAR」では、ダーツやビリヤード、ライブラリー「THE LIBRARY」では読書も楽しめる。リラックスできる空間とし、社員の交流を促進する仕掛けを散りばめた。
9階のミーティングスペース「HARBOR」は、港町の名前を各部屋に割り振った。伊藤部長は、「部屋『B』はバルセロナ、『Y』は横浜というように、ミーティングルームにAからYまで地名を付けた。旅をし続けるという意味合いを込めて、Zの部屋は作らなかった」と説明する。

参加者は見学後、食堂で懇親会を行った。企業のサステナビリティ担当者を中心とした参加者同士で、活発な情報交換が行われた。
サステナ経営塾の講師で、一般社団法人日本民間公益活動(東京・千代田)の鈴木均・シニア・プロジェクト・コーディネーターは、「サステナ担当者は悩むことも多いと思う。それでもサステナ経営塾で培った横のネットワークを活かしながら、持続可能な社会の実現のためにがんばってほしい」と語った。
オルタナは4月16日に「サステナ経営塾第21期」を開講する。上期(初級編、4月~8月)は、サステナ経営検定3級「サステナビリティとSDGs」、下期(中級編、10月~翌年2月)は、サステナ経営検定2級「ESGとサステナブル経営」と連動する。それぞれテキスト(PDF)と無料受験の特典が付き、通期(40コマ)の修了者には「サステナ経営アドバイザー」の称号を付与する。現在、受講申込みを受け付けている。
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