超富裕層上位0.1%の1日の排出量は最貧困層50%の1年分以上

記事のポイント


  1. 世界の富裕層上位0.1%の1日のCO2排出量は、最貧困層50%の1年分より多い
  2. 国際NGOが気候危機の不平等に関する報告書「気候略奪」をまとめた
  3. 超富裕層の炭素排出量の多い生活様式が、世界の炭素予算を浪費しているという

国際NGOのオックスファムは10月28日、気候危機の不平等をまとめた報告書『気候略奪』を発表した。それによると、世界の富裕層上位0.1%が1日に排出するCO2は、最貧困層の上位50%の1年分を上回る。報告書は、プライベートジェットや豪華ヨット、広大な邸宅でのエネルギー消費など、超富裕層による炭素排出量の多いライフスタイルが、世界が気候災害を回避するために使えるカーボンバジェット(炭素予算)を浪費している、と糾弾した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

プライベートジェットや豪華ヨットなど、
超富裕層の排出量の多いライフスタイルが
地球のカーボンバジェット(炭素予算)を浪費している

■「気候危機は不平等の危機」

貧困の撲滅を掲げる国際NGOのオックスファムは10月28日、『気候略奪:力を持つ少数の人が、世界をどのように災害に縛り付けているのか』と題する報告書を発表した。

同報告書は、豪華ヨットやプライベートジェット、広大な邸宅に伴うエネルギー消費に代表といった、超富裕層による贅沢なライフスタイルが、地球全体のカーボンバジェットを浪費していると指摘する。

その陰で、気候変動の影響を最も深刻に受けているのは、貧困層や社会的弱者だ。

オックスファム・インターナショナルのアミタブ・ベハー事務局長は、「気候危機は不平等の危機だ」と強調した。

■私用ヨットやジェットの年排出量は普通の人の一生分

報告書は、最富裕層の排出量削減にフォーカスを当てる理由を、以下のように説明する。

「大多数の人々にとって、排出量の主な発生源は、政府の政策や企業が設計したエネルギー・交通・農業インフラが決定する。このインフラの外での活動は、通常、法外な費用がかかる」

「貧困層にとって、エネルギー使用量の削減は、生活水準の低下を招く可能性が高い。貧困層の排出量は既に低い水準だ。世界の人口の45%の人は、1日1人当たり6.85ドル(10月30日現在の為替レートでは1048円)以下の収入で生活しているが、その排出量は微々たるものだ」

「対照的に、オックスファムが超富裕層の生活様式の排出量を調査したところ、豪華ヨットとプライベートジェットによる年間排出量は、一般の人々の生涯の排出量の平均値を上回る」

「超富裕層が贅沢な生活様式の一つを削減するだけで、CO2排出量には大きなインパクトがある。そして、それは彼らのウェルビーイングにほとんど影響しない」

■「1.5℃」達成には超富裕層の排出量を99%減に

報告書によると、1990年以降、最富裕層上位0.1%(7900万人)によるCO2の排出量は32%増加した。しかし最貧困層上位50%(39億人)の排出量は3%減少した。

また、貧しい39億人の1人1日当たりの排出量は平均2kg、地球上の全人類では平均12kgだが、最富裕層上位0.1%は800kg以上だ。

報告書は、もし世界のすべての人が最富裕層上位0.1%と同じ量のCO2を排出した場合、人類はカーボンバジェットをわずか3週間未満で使い果たすと算出した。また、人類が地球の平均気温の上昇をパリ協定で定めた「1.5℃」内に収めるには、富裕層上位0.1%が、2030年までに1人当たり排出量を99%削減する必要がある、と断じた。

なお、最富裕層上位0.1%とは、年収52万8125ドル(約8052万円)以上の7900万人だ。この層の平均年収は168万5606ドル(約2億5700万円)に上る。一方、最も貧しい層から数えて上位50%に当たる39億人は、年収3784ドル(約57万7千円)以下で暮らす。この層の平均年収は764ドル(約11万6500円)だ。オックスファムは、世界不平等データベースの2023年の数値を基に算出した。

■超富裕層の投資の6割が石油・ガスや鉱業に向く

報告書が問題視したのはCO2の排出量だけではない。

「超富裕層は、汚染企業にも積極的に投資し、私的な利益を得ている」と指摘し、「超富裕層が政治的・経済的影響力を駆使して、私的利益を最大化するために、人類を化石燃料への依存に縛り付けている」と糾弾した。

オックスファムの調査によると、超富裕層の投資の約6割は、石油・ガスや鉱業など気候への影響度の高いセクターに向けられている。その投資活動は、CO2換算で年平均190万トンを生み出し、この量はプライベートジェット機で地球を約1万周するのに相当するという。

「わずか308人の超富裕層の投資ポートフォリオが生み出すCO2排出量は、118カ国の排出量合計を上回る」とも指摘した。

ベハー事務局長は、「世界で最も裕福な人たちが、気候の破壊に資金を提供し、利益を得ている。その一方で、歯止めの利かない彼らの権力によって、世界の大多数の人々が致命的な結果を背負わされている」と述べた。

■「カーボン・メジャーズ」に出資する投資家名も明らかに
■富裕層の権力と富は政策決定にも影響する
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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #脱炭素

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