女性や子どもたちの活躍が目立った東日本大震災15年の復興

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記事のポイント


  1. 東北地方は東日本大震災15年目の日を迎える
  2. この15年間で、街はどのように変わってきたのか
  3. SDGsとうほくの紅邑晶子代表理事に聞いた

2026年3月11日、東北地方は東日本大震災15年目の日を迎える。これまで防災や街づくり、SDGs(持続可能な開発目標)の普及に力を入れてきた一般社団法人 SDGsとうほく(仙台市) の紅邑晶子代表理事にこの15年間の移り変わりを聞いた。(オルタナ創刊編集長・森 摂)

ーー大震災から15年目を迎える仙台市や宮城県内の様子はどうですか。

特に変わったことはないですが、コロナ禍以来、中止していた3月11日の式典が、震災15年の節目ということで、いくつかの自治体で再開することになりました。

仙台市役所前の勾当台公園仮設広場や若林区文化センター、宮城野区役所、太白区役所で献花台を設置するようです。この3つの区役所は沿岸部に面して地域です。仙台市の追悼式では、市長のスピーチもあるそうです。高校生が中心になって市民広場(青葉区)でキャンドルナイトの予定もあります。

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ーー高校生たちは震災当時、1-3歳の幼児だったので、震災の記憶が無かったのでは。

はい、確かに震災を覚えている子どもは少ないですが、SDGsの影響もあって、震災の伝承を大事にしたり、防災に関心を高めている若者が増えているように思います。

SDGsのゴール11の「b」で、「仙台防災枠組」というが出てくるので、小中学校でもしっかり学んでいると思います。仙台市は2016年から毎年、仙台防災未来フォーラムを開いていますが、当一般社団法人も毎年、セミナーをやっています。

このフォーラムの出展者には企業や自治体だけでなく、高校生や大学生がブースを出すなど、若者たちの積極的な取り組みが目立ちます。

――「3.11」を忘れない取り組みは続いているのですね。

例えば宮城県東松島市は2018年、SDGs未来都市に県内で初めて選ばれましたが、防災やSDGsの取り組みを積極的にやっています。地域の子どもたちも頑張って活動しているようです。

ーーこの15年間でできたことと、できなかったことは。

日本では、地震などでの避難所の運営は男性が多かったのですが、東日本大震災では、女性たちや子どもたちが活躍していました。被災地では若者たちが活躍する姿が、多く見受けられました。「防災士」という資格がありますが、女性団体の呼びかけで女性が資格を取る動きができて、女性の防災士さんが増えました。

ーーできなかったことは。

阪神淡路大震災の時もそうでしたが、「避難所は体育館」がお決まりでした。体育館の冷たい床に毛布などを敷いて寝るのです。ところが、2024年1月の能登地震の直後に、台湾で地震が起きた時に、日本と台湾の避難所の違いに驚きました。

台湾やイタリアでは、家族ごとにテントに入ることができました。企業やNGO/NPOからの食事や日用品の提供が豊富でした。

日本でもようやく、段ボールベッドを準備している自治体もありますが、そもそも避難所の運営は地域のコミュニティ任せです。地域の学校の先生がやったりします。地域はもっと企業やNGO/NPOと連携をして、もう少し快適な避難所づくりをして欲しいです。

今年11月に、政府が防災庁を作る予定ですが、ハードだけではなく、ソフトの面でもしっかりバックアップしてほしいです。

――官民の連携がまだ足りないということですね。

震災後に、企業の特徴や強みを生かした形の支援を考えたり、包括連携協定ができたりしていますが、他地域にとってモデルになるような取り組みが「見える化」されると、もっと参考にできると思います。

南海トラフ地震に向けて、高知県や静岡県でも防災・減災に取り組んでいると思いますが、東日本大震災で蓄積したノウハウも生かせるはずです。その意味でも、「防災庁」には期待したいです。

ーー一方で、居住人口や関係人口が減ってしまった自治体も少なくないようですね。

今年3月31日、復興庁の出先機関「宮城復興局」「岩手復興局」が閉鎖になります。ハード面では一応の完成があったというのが理由ですが、ソフト面での心のケアなどの支援にはまだまだ課題があります。これからは各自治体の福祉サービスを使って下さいとのことですが、その点が心配です。

局の廃止に対して、継続を要望する声はあったものの、結局は廃止されます。福島県では「復興公営住宅」でのコミュニティ支援も、この3月で終了します。これまでそこに住んでいる人の自治会への支援、コミュニティづくりの支援をNPOがやっていたのに終了してしまうことに不安の声が出ています。

ーーほかに変化はありましたか。

仙台市、石巻市、岩手県内などに大震災の伝承をする施設ができたのですが、そこを訪れる人が年々少なくなっていることが懸念されます。神戸の「人と防災未来センター」はこれからの備えを学ぶ防災学習施設として利用されているそうですが、東日本大震災の場合は、施設へのアクセスの問題もあり、「東北まで来て、見てみたい」という人が少ないように思います。

ーー原発の再稼働に対してはどういう思いですか。

NPO法人ふくしま連携復興センターでは、被災者の県外避難者の支援をしていますが、まだ2万人以上、県外避難者がいます。除染して、戻ってよいエリアも増えていますが、実際に戻る人は少ないようです。福島県内の自治体は、被災者が戻るのではなく、他地域からの移住・定住を募り始め、補助金を出したりしています。

ーーもし震災が起きていなかったら、今とは違う東北があったと思いますか。 

この震災がきっかけで、学生や女性たちの活発な活動が生まれた気がするので、それは良かったと思います。

――一般社団法人 SDGsとうほくの次のイベントは何ですか。

3月14日(土)13時30分~15時まで、仙台防災未来フォーラムで、セミナー「住み続けられるまちづくりは、住み続けられる家づくりから」を開きます。

地元のリフォーム・リノベーションの業者「株式会社スイコー」の澤口司代表には、長く住み続けるためには環境に配慮して、長く住み続けられる家が大切だという話をしてもらいます。公共施設の設計をやっている「株式会社関・空間設計」の江田紳輔取締役には、震災後に公共施設を作るにあたって、住民の声を聴きながら施設の設計した話をしてもらいます。仙台の街づくりNPO「都市デザインワークス」のプランナーである大井菜摘さんには、仙台のまちなかで取り組んでいるエリアマネジメントについて伺います。

森 摂(オルタナ代表取締役)

森 摂(オルタナ代表取締役)

株式会社オルタナ 代表取締役。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在も代表取締役。前オルタナ編集長(2006-2025)。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。武蔵野大学サステナビリティ研究所主任研究員。一般社団法人サステナ経営協会代表理事。日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員。公益財団法人小林製薬青い鳥財団理事

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キーワード: #サステナビリティ

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