日立造船はこのほど大阪市内で開催した株主総会のなかで、今後パーム油発電事業に「取り組まない」とする意向を表明した。建設を請け負う予定だった京都府の舞鶴パーム油発電所事業からも撤退する方針だ。同社株主で「舞鶴西地区の環境を考える会」の森本隆代表の質問に、環境事業本部長の白木敏之常務取締役が答えた。同発電所事業をめぐっては、地域住民やNGOから騒音や熱帯林の破壊などを懸念する声が上がっていた。(堀理雄)

舞鶴パーム油バイオマス発電所は、2022年の運転開始に向け同市喜多地区への新設が予定されていた。しかし事業計画をめぐっては、騒音・悪臭問題や安全性、熱帯林の破壊や気候変動問題などの懸念が住民から相次ぎ、アンケート調査ではほとんどの地域住民が反対の意向を示していた。
そうしたなか、事業への出資を予定していたカナダの再生可能エネルギー投資会社アンプ社が4月、事業からの撤退を表明。建設を請け負う日立造船と舞鶴市は新たな出資者を見つけ事業を推進する意向を示していたが、6月13日に地域住民を交えて開かれた説明会では、6月中に出資者が見つからなければ事業主体の解散手続きに入ると説明していた。
6月23日に開かれた株主総会では、株主による質問時間のなかで森本代表がパーム油発電事業の是非を質問。環境への悪影響が世界的に問題視されている点などを踏まえ、今後も事業を行うかどうかについて経営の意向をただした。
日立造船の白木常務は「世界から厳しい視線を投げかけられているなかで、パーム油発電に関しては事業投資を行わず、世界の流れにそっていく。取り組むことにはならない」と発言。森本代表が確認すると白木常務は「(事業を)しない」と再度表明した。
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