なぜ総選挙で原発は争点にならなかったのか

開票速報の結果を見ながら渋い表情をする嘉田代表

第46回衆院総選挙は16日、投開票され、自民党が単独過半数の294議席、公明と合わせて325議席と圧勝した。一方で民主党は公示前の230議席の4分の1を割り込む57議席と激減、「卒原発」を旗印に掲げた日本未来の党はわずか9議席にとどまった。景気の悪化や外交不安などにかき消されて、「原発」は争点化しなかったのだろうか。

未来の党の嘉田由紀子代表は開票作業が始まってから都内で開いた記者会見で「国民の7割が原発をやめてほしいとも言われるなか、『3・11』後初の国政選挙でその思いを受け止めさせてもらいたいと党を結成した。しかしその思いが投票行動につながらなかった」と悔しさをにじませた。

「自民党は原子力ムラをつくった張本人たちで、福島の過酷事故への対策をしてこなかった。そんな自民党が原発を進めると思うと恐ろしいが、今回は雇用や外交に比べて原発問題が争点化しなかった。自民党が勝利したから原発推進となるのはいささか強引」とした上で、「日本にこれ以上、核のごみは置いておけない。原発を1日動かせば大量のごみが出る。これを止めないでどうするのかと、これからの10年でさまざまな政変があると思うが、私たちは一貫して言い続ける」と、次の国政選挙に向けて決意を示した。

未来の党に対しては小沢一郎氏との連携について強い批判や反発があり、有権者に敬遠されたとの見方がある。嘉田代表は小沢氏を党の要職にはつけない方針を改めて示しながら、「小沢さん自身は原発ゼロに本気。その力は大きい」と「小沢頼み」の姿勢も変わらず、不透明さは残る。

同党の惨敗と「2030年代に原発ゼロ」を公約にした民主党の退潮から、自民党政権下で再び原発政策が推進されるのは確実だ。しかし、未来の党飯田哲也代表代行は「自民党が勝利におごって原発の再稼働を強行すれば、大飯原発の再稼働で一気に支持を落とした民主党政権と同じ轍を踏むことになる。選挙とは違うところでもその不当さを訴えたい」と牽制した。(オルタナ編集委員=関口威人)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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