ロングインタビュー「この会社はすでに一族のものではない」

■やっかいな問題を解決する楽しさ

――何かうれしかったこととかありますか。

伊奈:「ここへはどうやって行くのですか」「こう行って」というのは、別に私がいなくても、他の人に聞いたっていいし案内所だってあります。そうではなくて、もうちょっと大変な、「迎えに来ている人がいないので」と、日本語もろくにできない外国の人なんか来て、どうしましょうみたいな時に、ある程度いろいろお世話をして、何とか問題解決というと、それは私がいたから手助けができたのかなとかね、そういうようなことはありますよね。

――楽しそうですね。

伊奈:とっても楽しいですね。

――もうこれはずっとお続けになるおつもりですか。

伊奈:もうちょうど5年になるのですけど、2月の17日が開港5年なのですよね。

――もうそんなになりますか。

伊奈:ボランティア始めて5年になるのですけれども。

■グローバル・スタンダードでおかしくなった

――ありがとうございます。最後に改めて、中盤で、社員と株主と顧客とですね、順位づけをするのであれば、一番はやっぱり社員であり、それからその次は顧客・取引先ということでしょうか。

伊奈:その次はあまり考えたことはなかったのですけどね(笑)

――いずれにしても社員が一番大事であると

伊奈:そうと私は思いますね。

――僕も実は30前くらいの時に、ある経営者からそういうことを伺った事はありまして、その時は実は理解できなかったのです。つまり「お客様は神様」であるならわかるのですが、でもお客様より社員が大事という気持ちはその時は全然わからなかったですね。でも自分で今、会社を経営してみると、こういうことだったのかという、実はわかってきて。

伊奈:やっぱり社員がその会社に、この会社にいていいなと思いながら仕事をする会社でなかったらね、お客さんの役に立つようなサービスや商品も出て来ないのじゃないかなと思います。

――それは、おそらくどんな業態でも業種でも変わらないような気もします。当たり前かもしれないですけど、それもなかなか、世の中の経営者で、わかってらっしゃる方って多いでしょうかね。よくはわからないですけどね。そこは何か一番大事であり、21世紀のビジネスの物差しになるのじゃないかと思いますし、でもそれは実はおそらくはバブル前の日本の、いい時の日本に、単に戻るだけなのかもしれないという、そういうことなのかもしれないです。

伊奈:今おっしゃったように、またこれからそういうところへ戻ってこればね。「失われた10年」というのがあるけど、グローバル・スタンダードという言葉でかき回されておかしくなっちゃった20年か30年というのがあってですね。

■日本的経営の「あるべき姿」を

――そうです。失われた20年ですよ、少なくともね。

伊奈:また日本的経営というのか、経営の本来のあるべき姿にまた戻って来られるのかもしれません。

――まだ戻ってないと思います。

伊奈:戻ってないですよね。

――戻さなきゃいけないというのはあると思いますけれども。

伊奈:そういうふうになれば。

――世の中全体ではまだ戻っていないような気がしますね。わかりました。ありがとうございます。今日は非常に深い話をありがとうございました。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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